飲食店の広告戦略(2)―集客するための広告―

 前回のエントリーでは飲食店の広告についての概要をお話ししました。今回は集客のための広告方法についてお話ししたいと思います。
 
 広告の目的はターゲットに店舗の情報を届けることです。
 
 老人層が店舗のメインターゲットなのにインターネット広告ばかり打ち出していては集客は見込めません。
 
 飲食店のための集客できる広告とは、広告戦略の基礎である世代別」「性別」「利用目的」に合わせた広告を打ち出すことです。
 
 今回は分かりやすいように、各事例ごとに具体的な広告方法を紹介していきます。
 
 
 
事例1)オフィス街や繁華街の飲食店・居酒屋の場合
 
 
メインターゲット:サラリーマンやOL
 
 オフィス街や繁華街にある店舗の場合、飲食店の集客最重要項目である「人通りの多い立地」と言う条件を満たしているため、何も考えずともある程度の集客は見込めます。言うなれば存在しているだけで広告を出ているようなものです。(もちろんテナント料も高額になりますので、広告料をテナント料に回しているということでもありますが)
 
 勿論立地の上に胡坐をかいているわけにはいきませんので、しっかりと広告も打ち出していきたいところです。
オフィス街や繁華街の飲食店の場合、メインとなるターゲットはサラリーマンやOLとなりますので、インターネット広告、特に飲食情報サイトへの登録及び広告料の課金が必須と言えます。
 
 調査会社の資料によれば、飲食情報サイトのひとつ「食べログ」は20代から40代の利用率は50%弱にのぼり、特に20代については61%が利用経験者です。
 飲食情報サイトの利用率は年々上昇していくと思われますので、少なくとも「食べログ」「ホットペッパーグルメ」「ぐるなび」のいずれか一つには力を入れた方がいいと思います。
 
 逆にチラシや新聞の折り込み広告等のアナログ広告は気にしないでもいいでしょう。ターゲットに届けることが難しい上に、20代から40代は紙のチラシなんて見向きもしない方がほとんどです。
 
 
 
事例2)地域の住宅地近くにある飲食店の場合
 
 
メインターゲット:地域の家庭及び老人層
 
 地域密着型店舗の場合、ターゲットは地域の家庭や老人層になります。基本的には狭い場所をターゲットとしていますので、インターネットでの広告よりは主としてアナログな戦法、例えばチラシや新聞の折り込み広告で、店舗の存在を周辺住民に周知させることが有効となります。(もちろん飲食情報サイトへの登録や店舗サイトの作成が無意味なわけではありません。)
 
 地域密着型店舗の場合の難しいところは、全国一律の広告戦略が通用しないところです。
 
 例えば同じ住宅地近くでも、古い家が立ち並ぶ下町と新興住宅地では効果を発揮する戦法が異なります。
 
 住民同士の繋がりが比較的強い下町ならば常連が常連を呼ぶ口コミ広告や町内行事の参加による集客は効果を発揮しますが、新興住宅地の場合は数人に周知してもらっても地域全体への広告にはなりません。どちらかと言えば子供向けのサービスやクーポン券付きのチラシを各家のポストに投函した方が有効でしょう。
 
 また、地域情報誌に対する広告の出稿も有効です。観光地であれば「ことりっぷ」などの観光情報誌に対する出稿は大きな集客となります。
 
 地域の飲食店の広告は少々難しいですが、自分の地域ではどのタイプの家庭が多くどの年代が中心なのかを考えて、周辺住民の層に合わせた広告を打ち出していくことが重要となります。
 
 
 
事例3)高級志向の飲食店の場合
 
 
 メインターゲット:高所得者及びお祝い事が必要な人
 
 ざっくりと高級志向の飲食店と言っていますが階層が上に行けば行くほど店舗スケールは細かく分かれています。と言っても大企業の社長さんや政治家御用達の店舗の広告について語っても仕方がありませんので、「中の上」から「上の下」あたりを想定して書いていきたいと思います。具体的に言うとディナーが一人1万円以上になるくらいの、ちょっとしたお祝い等に使われるようなレストランと言ったところでしょうか。
 
 高級志向の飲食店の場合、集客のハードルは一般の飲食店と比べて高くなります。
 
 店舗のブランディングや看板メニューの存在は当然として、「客の質」や「店の格」も考えなければなりません。周知してもらいたいからと言って闇雲にチラシをばら撒いたりネット広告をするだけでは、むしろ集客に対してマイナスしかでないでしょう。
 
 基本的に高級店は口コミによる広告が最も重要となりますが、当たり前のことですがお客さんが来てくれなければ誰も口コミなんてしてくれません。
 そこで必須なのがインターネット広告です。
 
 自店サイトの作成も当然のことながら、「Facebook」や「Instagram」などのSNSや有料広告も活用し店舗の周知に努めます。「twitter」も悪くはないですが、有料広告の出稿についてはあまり効果が無いかもしれません。
 
 広告の内容で大切なことは、「店に行けば特別な体験ができると言う期待感」を演出することです。
 
 特に写真の投稿は華やかさが必須です。基本的にはトップページや定番メニュー等の重要なところはプロの写真家に頼みつつ、日々の料理を投稿する場合にもレタッチできる人材やフリーランスのデザイナーを抑えておきたいところです。
 
 SNSをやる上でも、投稿する文書にしてもその料理の説明のほかに歴史やちょっとした小咄も添えるといいでしょう。間違っても政治表明や誰かとの口論などしてはいけません。
 
 
 
 
事例4)コンセプト系飲食店の場合
 
 
 メインターゲット:全国(及び海外)のニッチな層
 
 コンセプト系飲食店はインターネットが中心である点で、高級志向の飲食店と広告方法は似ています。
 
 基本的にはSNSや自店サイト等で集客し、口コミでターゲットを広げていく方式です。店舗にもよりますが高級店よりは比較的ゆるーくSNSやサイトを更新しても許されます。アナログ広告も別に打ち出したところで問題はないですが、恐らく効果はほとんどないでしょう。
 また、コンセプト系飲食店はニーズが狭いので、いかにターゲットにヒットさせるかが重要です。幅広く飲食情報サイトを活用するか、ブログやSNSを使って経営者自身がコンテンツになるかする必要があります。
 
 ちなみに、「ラーメン屋」は地域志向の店舗のようでありながら実のところコンセプト系飲食店に近いものがあります。ラーメンを食べに全国行脚する層はいつの時代にも存在しますし、ラーメン専門の雑誌やサイトも多くあります。
 ラーメン屋が広告打ち出す場合、地域重視のチラシを配るよりもインターネットによる集客からの口コミに繋げた方が効果が大きいのではないでしょうか。
 
 
 
・まとめ
 
 飲食店がとるべき広告戦略について各事例ごとにまとめましたが、つまるところ飲食店で有効な広告とは最初に述べたように広告戦略の基礎である世代別」「性別」「利用目的」に合わせた広告を打ち出すことです。
 「うちの店は事例に当てはまらないよー」と言う場合でも、世代別」「性別」「利用目的」を考えれば取るべき広告も見えてくるはずです。当事務所では有効な広告戦略についてのご相談も承っておりますので、必要な場合は是非当事務所までご連絡ください。
 
 さて、今回は「集客のための広告方法」についてお話ししました。次回は「飲食情報サイトとの付き合い方」についてお話ししたいと思います。