飲食店の開業を目指して(6)―いよいよ開業、開業直前期―

 このエントリーは飲食店の開業を目指して(5)―契約期を乗り切ろう―の続きとなります。

 前回のエントリーでは契約期についてお話しました。今回は開業まで残り1か月、第4フェーズ・開業直前期のお話をしたいと思います。

飲食店開業スケジュール
 開業直前期は文字通り、開業前の仕上げの時期です。
 
 開業日を逆算して考えても、二週間前には店舗オペレーションの確認まで行かなければなりません。
 つまり、それまでにメニューの最終決定をし備品や什器を揃え、広告の準備をしなければならないと言うことです。本当に忙しい期間になると思います。
 
 開業直前期にこなさなければならない項目は下記となります。
 
 
① 飲食店開業の営業許可及び補助金・助成金の申請
② アルバイト募集
③ メニューの決定、什器・備品・食材の発注
④ 店舗オペレーション確認・プレオープン
⑤ オープン
 
 似たような項目をいくつか纏めてもこの量ですので、盛り沢山な内容だと思います。
 一つ一つ順を追って見ていきたいと思います。
 

1.飲食店開業の営業許可及び補助金・助成金の申請

 
 店舗物件を契約し内装工事も終えることができたこの時期で、ようやく保健所やその他の役所に飲食店開業の営業許可を申請することができます。
 
 以前のエントリーでも言っていますが、飲食店開業の営業許可自体は定数制ではないので、要件を満たせば原則は営業許可が下りることになっています。
 他の飲食店開業指南サイトやハウツー本を見ると、「許可申請は自分でできる」としているものも見受けられます。
 しかし、役所に提出する申請書や添付書類が煩雑であり、開業前の忙しい時期にわざわざ時間を割いて勉強をしてまで、自分の力だけでやるべきことなのか疑問が残ります。
 
 また、提出した申請書に不備が多かった場合は、その補正に時間がかかり開業予定時期までに店をオープンできない可能性もあります。
 その点を考えると、やはりプロである我々行政書士がお手伝いすべきではないかと考えています。
 
 また、補助金・助成金についても、原則返却不要のお金ですので、活用できるものは活用していきたいところです。補助金・助成金は申請期間が短いものも多く、また、その存在を知らないままひっそりと終わっているケースも多々ありますので、補助金・助成金についても余程自信が無い限りは、その道のプロである税理士や行政書士、社労士の力を借りた方がいいでしょう。
 
 

2.アルバイトの募集

 
 基本的に飲食店では、営業中誰か一人は店にいる必要があります。
 そう言った意味でも、ほとんどの飲食店は、店長一人では店は回りません。
 
 また、規模によってはホールでの接客要員や厨房での調理要員がそれぞれ必要となるでしょう。家族の力を借りない場合は、アルバイトの募集が必須となります。
 
 
 アルバイトや従業員の募集は思ったよりも難しいと思います。
 まず開業前の店の前に張り紙を出しても中々応募はありませんし、アルバイト情報誌に出すとしても、そこそこの掲載料がかかります。
 何より有名チェーン店やその他業種との間で人の取り合いになりますので、運よく応募があっても、採用後にお断りされる場合も多くあります。
 求人を出す際は働き手の目線に立ち、どのような職場なら働きたいかを考えて掲載する必要があります。
 
 また、残念なことですが飲食店は従業員による横領が比較的発生しやすい業種です。横領を防ぐために相応のコストをかけるか、それとも多少の横領は織り込んでそれほどコストをかけないことにするかも考えなければなりません。
 
 

3.メニューの決定、什器・備品・食材の発注

 
 メニューについては、場所コストと時間コストの二つを意識して作成する必要があります。
 例えば開業するのがラーメン屋の場合、醤油ラーメン・味噌ラーメン・塩ラーメンの三種類の味を提供すると言うことは鍋とコンロが3つ必要になり、それぞれ面倒を見なければならないと言うことです。
 場所コストも時間コストもかかってしまうため、個人経営の店舗でやるべきではありません。
 逆にスープを醤油一本とし、トッピング等での差別化、ネギラーメンやバターラーメン等のメニューで売れば、場所コストも時間コストは抑えることができます。
 
 ラーメン屋の喩えは分かりやすい例ですが、喫茶店やイタリア料理店等でもメニューの決定で場所コストと時間コストが変わってくるものが多くあります。その辺りを踏まえてメニューを決定していくといいでしょう。
 
 什器・備品・調味料を含めた食材について、厨房の中で言えば使いやすいものや自分に合ったものを選べばいいと思います。
 しかし、ホールの調度品や食器については、統一感や店の格式にあった什器や食器を選ぶ必要があります。
 特に高級路線で行く場合は、一つ一つの食器にこだわりを持ち、また、その取扱いやメンテナンスについても学ぶ必要があります。

4.店舗オペレーション確認・プレオープン

 
 調度品が整い食器が揃い、アルバイトも採用したらいよいよ開店前の店舗オペレーション確認作業です。
 
 中には時間がなくて店舗オペレーションの確認やプレオープンをせずにぶっつけ本番で開業した、と言う方もいらっしゃいますが、時間が取れるならどう考えてもやっておいた方がいいと思います。
 特にプレオープンは開業までにお世話になった人や、資金調達の方法によっては出資者を招いた大事なレセプションイベントです。
 経営者自身のやる気にも繋がりますので、是非プレオープンイベントは開いておくといいでしょう。
 
 店舗オペレーションの確認作業は、主に下記の項目毎にチェックしていくと良いと思います。
 
 
① 厨房のオペレーション
 
  ⅰ.料理の提供時間及びクオリティ
    料理を出せるまでの時間が長すぎないか、また、質は充分か
 
  ⅱ.衛生管理の方法
    食品衛生法の基準は満たしているか、清掃やゴミの管理はできているか
 
  ⅲ.厨房及び作業の安全性
    火器等の調理器具の扱いは安全か、消防法・条例の基準は満たしているか
 
 
② ホールのオペレーション
 
  ⅰ.従業員の服装及び立ち振る舞い
    お店の顔であるホールスタッフへの教育はできているか
 
  ⅱ.オーダー伝達及び配膳等の方法
    ホールから厨房へのコミュニケーション方法は管理できているか
 
  ⅲ.レジの操作方法
    お金の出入り口であるレジの管理はできているか
    また、過不足が出た場合の対処はどうするか
 
  ⅳ.クレーム時の対処方法
    頻出クレームの対処方法はマニュアル化されているか
 
 
③ 厨房機器、備品及び食材等の管理オペレーション
 
 ⅰ.在庫の管理及び発注
   食材が切れることなく回すことができるか、調味料のストックは充分か
 
 ⅱ.納品及び検品の方法
   納品される食材の検品等のルールはマニュアル化されているか
 
 ⅲ.厨房機器の動作確認
   厨房機器が故障していないか
   また、故障した場合の修理方法及び問い合わせ先はどこか
 
 
 

5.オープン

 
 全ての作業と確認を終え役所から営業許可がおりれば、いよいよ店舗の新規開業です。
 
 店舗オープンの方法としては、事前に広告宣伝を多めに打ち出しオープニングキャンペーン等を実施して派手にオープンする方法か、最初は広告は控えめにし、近隣の住民だけに宣伝する方法があります。
 
 前者の方法を採用した場合初日に集客が見込めますが、スタッフが不慣れなうちに来客数が多くなるとやはり店舗オペレーションがうまくいかずトラブルが起こる可能性も高くなります。
 
 後者の方法でしたら来客数が多すぎて店が回らない可能性は減りますが、逆に集客がうまくいかずそのままずっと閑古鳥……なんて場合もあります。
 
 基本的にはしっかり広告を打ち出してオープニング期間に集客をしておきたいところですが、場合によっては一週間から二週間程、近隣住民にのみ広告を出してプレオープンに近い形で来店してもらい、ある程度スタッフに実戦教育を施してから正式オープン、と言う方法を取るのもいいのではないかと思います。
 
 

6.まとめ

 
 「飲食店の開業を目指して」と言うエントリーは今回で最後となります。少し長くなりましたが、最初から読んで頂ければ飲食店の開業準備に必要なことやオープンまでの流れがつかめるのではないかと思います。
 
 さて、店舗開業はようやくスタート地点に立てただけに過ぎません。これから自分の店を潰さないように、そしてますます発展していけるように、更なる道と未来が待っています。特にスタートアップ直後の経営者は代わりがいませんので、無茶をしすぎて体や心を壊さないように気を付けながら仕事をしていく必要があります。
 
 結びになりますが、当事務所は皆様の飲食店開業を心から応援しております。「飲食店開業について最初からコンサルティングして欲しい」、「資金の調達について相談したい」、「保健所に営業許可の申請だけして貰いたい」等、皆様のニーズに合わせて柔軟に対応いたしますので、まずはご相談からでも、お気軽にお申し付けください。
 
 宜しくお願いいたします。