脱サラして武士カフェは無理がある!

 コンセプト系飲食店の経営は誰しもが持ちうる夢ではないかと思います。
 
 例えば西部劇に出てくるようなバーでマスターをやりたい、中世ヨーロッパをイメージしたカフェでミストレスになりたい、ゲームに出てくるような世界観を使った店を開いてみたい等々。
 一般に浸透しているものでも、メイド喫茶や執事喫茶、他にも忍者屋敷をモチーフにした居酒屋なんかが有名だと思います。
 
 しかし、コンセプト系飲食店は普通に飲食店を経営するよりも遥かに難しく、廃業率も高くなっています。と言うのも、普通の飲食店と比べて分かりやすい制約やコストがあるからです。
 
 
 コンセプト系飲食店にはどのような制約やコストがあるのか?
 今回のエントリーではコンセプト系飲食店の難しさを見ていきたいと思います。
 
 

1.拘りの内装や調度品選びが必要

 
 コンセプト系飲食店のお客さんは世界観を体験しに来店します。内装はもちろんのこと食器一つ花器一つに至るまで、事細かに観察し店を評価します。
 
 例えば12世紀ヨーロッパのゴシック様式がメインコンセプトなのにもかかわらず15世紀のルネッサンス期のものが混ざっていたら、大きなマイナス点を付けられることになるでしょう。
 普通の人から見れば「中世ヨーロッパの似たような時期じゃないか」と思うかもしれませんが、コンセプト系飲食店のお客さんはそう言うところに本当に拘ります。
 
 逆に細部にまで拘った店作りをすれば、大きく広告をしなくても自然と口コミで広がっていきます。コンセプト系飲食店の成功には、経営者の勉強と強い拘りが必要になってくると言えるでしょう。 

2.従業員に特別な教育が必要

 
 コンセプト系飲食店は従業員に対してそれ相応の教育が必要になります。
 
 皆様ご存じ秋葉原に数多くあるメイド喫茶は比較的ライトな方針のところが多いですが、それでも通常の飲食店と比べれば教育コストは割高になっています。
 また、メイド喫茶であれば若い女性、本格的な執事喫茶であれば壮年の男性と、ホールスタッフとして配置できる従業員の幅は狭まることになります。
 
 従業員の幅が狭く教育が必要と言う事は、必然的に支払う給与も相応でなければ退店される可能性も高くなります。
 
 雇われる側は強かです。応募が少ないと言う裏事情を知っていれば、経営者の足許を見るような従業員も出てくるでしょう。
 ホールスタッフが足りないという事態は、全ての飲食店にも言える事ではありますが特にコンセプト系飲食店にとって死活問題となりますので、従業員に対して充分にケアする必要があります。 

3.客層が限定される

 
 当たり前のことですが、コンセプト系飲食店は明確なターゲットがありますので客層は限定されます。
 
 そう言った意味ではデメリットではありますが、ターゲットの絞り込みはマーケティング的に言えば悪い戦略ではありません。
 むしろ個人店にとっては、ランチェスター戦略に則った合理的な戦略と言えます。
 
 ただし、ランチェスター戦略もターゲットに届かなければ意味がありませんので、ターゲットの事を考えた宣伝広告はする必要があります。
 
 コンセプト系飲食店の場合は周辺の住民にチラシを配ると言った広告よりも、インターネットや同好会等のコミュニティーを重視した広告が有効です。 

4.店の種類によっては別の許可や制約が必要

 
 接客の方法によっては、例えば風営法にひっかかる可能性もあります。
 
 メイド喫茶で言えば風営法の1号営業に当たるかどうかの問題もありますし、仮に保健所や警察から風営法の許可が必要と言われてしまった場合には立地等によっては開業できない可能性も出てきます。
 
 正直に言えば例に挙げたメイド喫茶については扱いも中々難しいところで、ある保健所ではすんなりと許可が下りたのに対して別のところでは何度も質問されて業務内容が制限させられたりと、行政によって対応がかなり変わってきます。
 
 我らが千代田区の保健所については、メイド喫茶のような接客システムですと申請の段階でかなり厳しくチェックされます。
 特に秋葉原はメイド喫茶から風俗店まで様々な形式の店が多くありますので、抜けを許さないチェック体制が必要と言う事なのでしょう。

5.まとめ

 
 結論から言えば、コンセプト系飲食店は通常の飲食店と比べて手を回すべき箇所が多く、また、従業員に対して特別なケアが必要となってきます。
 
 比較的ライトな形式でありモデルケースが数多く存在するメイド喫茶ですら、経営者の経験が薄い状態である「脱サラして即開業」には向かない方式ではないかと思います(そもそもメイド喫茶自体は今やレッドオーシャンであり、ニッチな需要で勝負するはずのコンセプト系飲食店の在り方とは少々離れてしまっている向きもありますが……)。
 
 どちらかと言えば通常の飲食店を数店舗経営しながら事業を軌道に乗せた後、余剰資産を使った経営者の趣味的に開業した方が成功する確率も高いのではないでしょうか。
 
 しかしコンセプト系飲食店はターゲティングや拘りがうまくいけば、「この店にしかない」を実現させることができます。
 
 多少無茶な場所に店を作っても、立地によらない集客や利益率の高い商売が可能でしょう。
 何よりも「経営者のやりたい事」で商売することができますから、働いていてきっと楽しいはずです。
 
 開業1店舗目からコンセプト系飲食店はお勧めしませんが、何店舗か軌道に乗せた後でやってみる事を目標にしてみるのもいいかもしれません。