飲食店と調理師の話

 「俺さ、脱サラしていずれ居酒屋開こうと思うんだよ。だから学校通って調理師免許取ろうと思うんだけど、難しいかなあ」
 以前にこんな相談をされたことがあります。
 
 さて、よく勘違いされていることなのですが、医師や弁護士とは違いどのような種類の飲食店を開くにしても、国家資格である「調理師」は必要とされてはいません。
 飲食店を開業する際に必置なのは「食品衛生責任者」であって、「調理師」は要求されていないのです。
 
 それでは一体調理師とはなんなのか、飲食店を経営する際に本当に置かなくていいのか、今回のエントリーでは飲食店と調理師についてお話ししていきたいと思います。

1.調理師って何者なの?

 調理師とは、「調理師の名称を用いて調理の業務に従事することができる者として都道府県知事の免許を受けた者」と法律で規定されています。
 
 分かりやすく言うと、国が定めた調理に関する知識や技術をちゃんと習得した上で国に認められた人で、それを申請して知事から免許を貰った人が調理師と名乗れるわけです。
 逆にそれ以外の人は「調理師」を名乗れず、無断で調理師を名乗ると罰則が与えられることになります。これを名称独占権と呼びます。
 
 ちなみに名称を独占していいのは調理”師”であって調理”士”ではないため、「調理士」については誰でも名乗ることができます。
 ひどいところだと調理師資格者がいないのに料理人の数だけ数えて「調理士○○名所属!」と銘打って優良誤認を起こそうとしているところも中にはあります。
 
 調理師資格を取得するには専門学校に通って卒業単位を取るか、2年以上正規社員として調理の現場に関わった上で国家試験を受けるかのどちらかとなります。

2.調理師がいなくても飲食店は開いていいの?

 問題はないです。
 
 いかなる規模の飲食店も調理師は必置でありませんし、調理師がいなくても営業することができます。
 
 調理師には独占業務がなく、「調理師でなければできない」と言う仕事はありません
 
 これは飲食店に限ったことではなく大規模な社員食堂であっても給食センターであっても、法律上調理師が必要とされている業務は存在しません。
 料理の講師をするにしても調理師資格が必要なわけではないですし、調理師でなければ扱えない食品もありません。

3.じゃあ調理師って何のためにあるの?

 調理師法にて調理師が制定されている理由の一つとして、調理人の資質向上と調理技術の合理的な発達が挙げられています。
 つまり国としては調理師資格を定めることによって、我が国全体の料理及び料理人の質を上げていこうとしているわけです。
 
 調理師資格を持っていると言うことは国の定める調理技術は最低限保証されていると言うことにもなり、調理の現場に採用されやすいです。
 
 また、調理師免許を持っていれば飲食店許可の必須要件である「食品衛生責任者」の資格を無条件で与えられるため、わざわざ食品衛生責任者の養成講習を受けなくてもよいと言うメリットがあります。
 
 大きな規模の飲食店においては調理師資格持ちは重宝されるためそう言ったところに就職したいならば必要と言えますし、就業の待遇にも間違いなく差は出ると思います。
 
 ちなみに調理師の上位資格として、専門調理師及び調理技能士が存在します。
 調理師が総論だとすると専門調理師は各論であり、日本料理、西洋料理、麺料理、中国料理、すし料理、給食用特殊料理の6技能に分かれています。
 調理師技術審査に合格すると、技術審査試験の実技試験において選択した試験科目、例えば日本料理を選択していたとしたら日本料理専門調理師と名乗ることができるようになるわけです。

4.まとめ

 飲食店を開業するのに調理師資格者は必ずしも必要ではありません
 
 しかし調理師がいれば調理の技術及び知識に関してある程度保証されることになりますし、調理師であれば待遇に差が出る店も多いと思います。
 店によっては調理師資格保持者でなければ採用しないと言うところもあるようです。
 
 専門学校に2年間通って調理師資格を取得するのも3年間調理の現場で働いて国家試験に受かるのも大変ではありますが、自身に箔を付けられる上に取得した知識と技術は本物なので、自ら厨房に立つ飲食店経営者の方は資格取得にチャレンジしてみる価値はあるのではないでしょうか。
 
 
 
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