ガールズバー摘発に考える風営法の話

 
 逮捕された理由は風営法違反ですが、何もガールズバーを経営しているからと言って直ちに逮捕されるわけではありません。
 と言うよりも、普通は逮捕されないでしょう。
 
 では、どのような行為が風営法上問題で何があったから摘発されたのか、今回は風営法について軽く解説しながらお話ししていこうと思います。
 
 念のためお伝えいたしますが、当該ニュースの事件に対して直接警察署に取材をしたわけでもなく、事件に詳しい方に対して話を聞いたわけでもありません。
 ですので事件についてはニュースのみがソースのふんわりした情報しかないので、その辺りはご容赦ください。

1.ガールズバーとは何ぞや

 狭義ではバーテンダーが女性中心のショットバーであり、広義の意味では女性がギリギリ風営法上の接客とは言えない範囲で軽めにお話をしたり給仕をして貰って酒を飲む居酒屋がガールズバーと呼ばれています。
 
 ほとんどが「風俗営業法1号営業」は取得せず「飲食店営業許可」(及び「深夜酒類提供飲食店営業開始届」)のみを取得して営業していますので、風営法の厳しい規制は受けずに開業しています。
 
 と言う訳で風営法に引っかかるような席の隣に座ったりカウンター越しにマンツーマンでお話ししたりと言った接客は行われていません、と言うか、行ってはならないです。
 
 事業としては中々グレーなところもあり、テーブル席の客の傍に着席して給仕をしたり、カラオケで客とデュエットするなど風俗営業法1号営業取らないといけないんじゃないの?と言ったサービスを無許可で行っているところも中にはあります。
 
 無論、「風俗営業法1号営業」を取得して開業している店舗もあります。
 そう言った店舗だとホステスのように接客をしたり派手な服を着て給仕をしたりと言ったサービスを行っていても法律上問題ありません。

2.無許可営業ってどういうこと?

 大雑把に言うと、風俗営業法1号営業を取得せずに従業員に接客させたりゲームをしたりと言った営業をしていた」と言うことになります。
 
 従業員が客の隣やカウンター越しに座り楽しくおしゃべりしながら接客する場合や一緒にゲームをしたりと言った場合には、警察に対して風俗営業法1号営業の届出をしなければならないのですが、それをせずに営業すると無許可営業となります。
 
 今回摘発された店舗も事実上ホステスのような接客をしていたとのことです。
 
 ちなみにこう言うケースの場合「飲食店営業許可を取らずに飲食店を経営していました!」と言うことはほぼありません。
 飲食店の営業許可は要件が少なく基本的に一般的な業務用厨房施設や客室があれば難なく許可が取れますので、取らない理由がないからです。

3.じゃあ風営法の許可を取ってやればいいってこと?

 全く持ってその通りとなります。風俗営業法1号営業を警察に届出ていれば従業員に接客させても問題はありません。
 ではなぜ摘発されるようなリスクを冒してまで風営法上の許可を取らずに営業するかと言うと、風営法上の許可を取得するためには下記のようにハードルが高かったり、規制が多かったりするからです。
 
 
(1)深夜0時を越えて営業ができない。
 深夜と言うのは客入りが悪くなるかわりに帰宅するための手段が少なくなり店内に留まってくれるお客さんが朝までお金を落としてくれる可能性が高くなる時間帯です。
 しかし風俗営業法1号店になった場合、深夜0時(地域によっては深夜1時)までしか営業ができず、朝も6時以降でしか店を開くことができません。
 
 「店を閉めている」と言うロスが発生するため、それが嫌で風俗営業法1号店になりたくないと言うオーナーは結構います。
 
 
(2)風営法の規制に引っかかり、風俗営業法1号店として開業できない。
 風営法の営業規制はかなり厳しく、殆どの場合繁華街か商店街にしか開業することができません。
 また、たとえ繁華街であっても周囲に病院や学校がある場合は風営法の許可を貰うことはできません。
 
 特に学校が厄介で、最近はビルの一角に大学や幼稚園の分室が入居していたり地域の図書館が入っているケースが結構あります。
 その場合も許可を貰うことができないので、キャバクラやホストクラブと言った風営店舗を運営することはできず、通常の飲食店として開業することとなります。
 
 
(3)オーナーに犯罪歴があり風営法の許可が貰えない。
 風営法では1年以上の懲役若しくは禁錮の刑に処せられ、又は一定の罪を犯して1年未満の懲役若しくは罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して五年を経過しない者」は許可取得ができないとされています。
 
 これは名目上のオーナーだけでなく実質上のオーナーも警察に調査されますので、「裏にあいつおるやろ。だめやで前科者や」と警察に言われたら許可を貰うことができません。
 
 
 上記(1)~(3)の他にも様々な規制があるのですが特に(2)が厄介であり、「前ホストクラブだったところを居抜きで借りたのに近くに学校ができており、許可が取れなかった」みたいなケースも中にはあります。
 
 行政書士としては「できるだけ綿密な調査をしてからテナントを借りてください」と言いたいところではありますが、ビジネスの世界においてはそんなのんびりした事をしていたら先に物件を押さえられていつまでたっても開業できないなんてこともザラだと思います。
 
 リスク込みで迅速にテナントを借りるか、先に物件を押さえられるリスクを冒してちゃんと調査するか悩みどころです。
 どちらにしろ何らかのリスクは背負うことになるのでオーナー業は大変だと思います。

4.うちの店は違反してないと思うけど、いきなり摘発されたりする?

 原則で言えば、余程あくどいことをしていなければいきなり警察に踏み込まれてはい逮捕、なんてことはありません
 大体の場合一度か二度、行政側から「このやり方だと風営法の規定に抵触するので、風営法上の許可を届け出るか営業のやり方を変えなさい」通告が来るのが一般的です。
 
 風営法違反で逮捕となるのは「通告を無視して営業を続ける」「通告を受けて営業のやり方を変えたものの充分ではなかった」「裏によくない輩がついているのがバレてる」と言ったケースがほとんどです。
 
 ただし、風営法違反について通告を無視し続けるのは警察の顔に泥を塗ったと言う扱いなので他の行政処分と比べてかなりきつく絞られることにはなります。
 稼ぎが大きい場合は尚更です。
 
 ガーズルバーに限らず万が一行政から通告が来てしまった場合は行政と密に連絡を取り合った上で解決していった方がいいですし、金銭的に余裕があるのでしたら弁護士を間に立てる方法が望ましいと思います。

5.まとめ

 ガールズバーは接客方法や業態次第ですが基本的には風営法上の許可はいらないものの、グレーなことをやってる店もあります。
 今回摘発されたのはグレー(と言うよりもほぼ黒)なことをやっていた店であり、そう言った店でも警察に対して風俗営業法1号営業を届け出ておけば合法的に営業することができるはずですが、規制により許可のおりない地域だったり深夜に営業したかったりと何らかの理由で無許可で営業を続け摘発されたと言う流れであります。
 
 無論いきなり摘発されると言うことは少なく、行政から通告が来たりと前段階を踏んでから逮捕に至ることがほとんどですので、いたずらに不安がらなくても大丈夫ではあります。
 
 風営関係は結構複雑だったり規制が細かかったりするので、何かやるときは行政書士に相談した方がいいでしょう。
 
 
 
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