調剤薬局の開き方(1)ー調剤薬局はどうやって開設するの?ー

 調剤薬局のオーナーは薬剤師である必要はありませんが、実際にオーナーになっている方は薬剤師の方がほとんどです。
 こと難関の国家資格である薬剤師資格を持っており店舗経営や自立に興味があれば、独立開業してみたいものではないかと思います。
 
 それでは、調剤薬局を開くためには何が必要なのか?
 
 基本的に事業を創業するために必要なものは大きく分けて3つの柱、即ち資金・計画・場所であり、加えてタイミング創業者のやる気が揃えば開業できます。
 事業である以上、調剤薬局もそれは同様です。
 
 調剤薬局開設までには店舗設計や許可の取り方、資金調達まで色々と知っておかなければならないことが多いですが、今回のエントリーでは調剤薬局開設の概論的に、開業までのタイムスケジュール、開業のタイミング、そして開業場所及び資金についてお話ししていきたいと思います。
 
 

1.開業までのタイムスケジュール

 全く0から開業までどのくらいの時間がかかるのか?
 
 自己資金の貯蓄額や開業場所の目途、そして開業計画にもよりますが、一般的に資金0から思い立って開業まで辿り着けるには2年から3年以上が必要です。
 
 ある程度の自己資金があったとしても、実際に開業に向けて動き出してから開業までは1年近くかかるのが一般的であり、「思い立ってすぐ開業!」とはいかないものです。
 
 特に創業融資を考えている場合は融資の通る事業計画を作成するのに半年は見ておいた方がいいでしょう。
 参考例として調剤薬局開業のモデルタイムスケジュールを掲載しておきます。
 
 

 開業の計画については後のエントリー「調剤薬局の開き方(3)ー事業計画の作り方ー」で詳しくお話ししておりますので、後ほどあわせてお読みいただければ幸いです。

2.独立開業のタイミング

 調剤薬局の場合、開業のタイミングとしては下記のパターンが多くなります。

(1)懇意にしている医師が独立開業する際に、診療所近くに開業するパターン
 
(2)廃業予定、あるいは売りに出されている薬局を店ごと買い取るパターン
 
(3)都合よく病院や診療所近くの土地建物が手に入るパターン
 
(4)大手薬局法人のフランチャイズで開業するパターン
 
 特徴的なのは「(1)懇意にしている医師が独立開業する際に、診療所近くに開業するパターン」でしょうか。
 
 他業種でも懇意にしている取引先が独立したので自分も独立するパターンはよくありますので、そう考えると調剤薬局だけに存在する特殊なパターンと言うわけでは無いような気もしますが、イベントが起こりやすいと言う意味では他の業種よりも特徴的かもしれません。
 
 何もないところから即独立と言うパターンも無いわけではないですが、リスクが高いのでできれば上記4つのいずれかに当てはまるタイミングで独立した方がいいのではと思います。
 
 いずれにしろ、後ほど資金のところでも説明しますが、調剤薬局開設にはまとまった資金と人手が必要となるため新規に店舗を開設する場合、最低でも2000万円近くはみておいたほうがいいでしょう。
 
 ベストな開業機会が来たとしても、お金を調達できなければ開業できません。
 
 資金調達手段として政策金融公庫の創業融資制度等を利用するとしても、最低限1000万円から1500万円の自己資金を用意しておきたいところです。

3.調剤薬局開業の立地

 訪問服薬やかかりつけ薬局は浸透しつつありますが、薬局の売上はどうしたって近くの病院や診療所に左右されることになります。
 立地は病院の前や診療所の近く、あるいは少し離れていたとしても、競合他店がないところの方がよいでしょう。
 
 
 店舗開業の常識として「駅前や商業施設の近くで開業することが成功の鍵」と言うものがありますが、調剤薬局についてはその限りではありません。
 
 
 もちろん駅前や商業施設の近くは病院や診療所も多いので成功しやすいとも言えますが、その分賃料等のランニングコストは割高になってきますし、そう言った「美味しい場所」は業界問わず大手フランチャイズ店を展開する会社から地場企業、個人事業主に至るまで様々な業種の人達が空いた事務所を狙っています。
 その中に入り込んで競争を勝ち抜くと言うのは中々酷でもあるので、他の業種にはない「薬局の勝ちパターン」の一つである病院や診療所の近くに絞ってみるのもいいのではないでしょうか。
 
 診療所近くの立地に開業できたならば、勿論のことながら医師との関係は良好に保っておいた方がいいです。
 医師と関係を悪くして「近いけどあそこの薬局には行っちゃだめだよ」なんて言われてしまっては元も子もないですしね。
 
 
 無論のことながら病院や診療所の近くにない薬局でも、良好な経営を続けている薬局は存在します。
 
 そう言ったところは病院や診療所から少し離れていても医師や周辺住民の信頼を得ていたり、あるいは昔からその場所で薬局として活動しているケースもあります。
 
 開業からしばらくは我慢する期間があるとは思いますが周辺住民の信頼を得られれば、「病院から離れた薬局」と言うデメリットよりも「患者の近くの薬局」と言うメリットの方が大きくなり、病院が近くにない場合でも成功する可能性は高くなります。
 
 と言う訳で、立地選びの第一候補として「病院や診療所の近く」、それが叶わない場合にはスタートダッシュを捨てて「時間をかけて周辺住民や近隣医療機関の信頼を得る」と言う戦略が良いのではないかと思います。
 
 開業の場所については、のちのエントリー「調剤薬局の開き方(4)ー開業場所は○○がいい!」でより詳しくお話ししています。

4.独立開業に必要な資金

 独立開業に必要な自己資金は1000万円から1500万円と言いました。
 
 自己資金の貯め方にもよりますが、1000万円から1500万円あれば創業融資も受けやすくなり一般的な開業資金まで到達することができるためです。
 
 もちろん1000万円に到達していなくとも、賃料の安い地方であったり持ち家を改装するのであれば開業可能となりますので、絶対に必要!と言う訳ではなくひとつの目安として考えて欲しいと思います。
 
 無論のことながら都心の一等地で大型病院の前ともなれば1500万円程度では余裕で足りないですし、そもそも物件が抑えられません。
 
 
 さて、開業資金で必須なのが下記の項目となります。
 
 
(1)店舗費用
 賃貸の場合は初期賃料及び保証金、土地建物調達の場合は頭金です。
 
 賃貸の保証金は家賃の6か月分である場合が多いので、賃料が15万円の場合は初月賃料+保証金で税込み115万5000円はかかる計算になります。
 
 調剤薬局はスケルトン(何も入っていない空っぽの事務所)から開業するケースがほとんどであるため、内装費用や設備費用もかかりどんなに安めの設備やリース等を導入したとしても店舗費用だけで500万円から700万円は見ておいた方がいいでしょう。
 
 特にレセコンが高額でして、リースにしたとしても結構な額を持っていかれます。
 
 
(2)医薬品費用
 一般的に開業時の備蓄医薬品購入費の目安は300万円から400万円と言われていますが、薬局の規模や近隣の医療機関によって初期費用は上下します。
 
 医薬品の仕入れ数量はサービスの品質にも繋がりますので、できれば抑えたくないところです。
 
 
(3)運転資金
 薬剤師や事務員の数にもよりますが、運転資金の大部分は人件費です。
 
 オーナー1人でも回せないことはありませんが、自身の休憩時間や不測の事態を考えると難しいですし、地域貢献活動で夜間急患薬局や小学校薬剤師等を兼務するならばなおさらであると思います。
 
 正規雇用で事務員を雇うとなれば給与の支払いに加え、社会保険料と労働保険なども必要となります。
 
 その他に家賃や水道光熱費・雑費等も考えて、三か月から半年分の運転資金は用意しておいた方がいい計算になります。
 そう考えると運転資金の目安としては大体500万円から600万円となります。
 
 
 
 開業資金については開業形態にもよりますが、懇意にしている医師について行くために店舗となる土地の調達から……ともなれば資金も時間も相当かかってしまうこととなります。
 
 1からではなく売りに出されている薬局を店ごと買い取るパターン(いわゆる薬局M&A)なら安く済みそうに思えますが、買い取り費用は意外と高くつき、資金面おいては通常の開業と同じくらいかかる場合もあります。
 ただし薬局を店ごと買い取った場合は開業までの時間を大幅に短縮できたり、開店前から顧客から一定の信頼を得ていると言うメリットもあるので独立を考えている時にタイミングよく売りに出ていればスタートアップの候補になるのではないでしょうか。
 
 ビルの一角を借りて新規開業する場合、土地建物を調達するよりは遥かに楽ですし資金的にもタイミング的にもこの形態からスタートとなるのが一般的とは言えますが、調剤薬局は一般的な事務所や飲食店とは違いリフォームが特殊なものもあるため、ノウハウのある内装屋を探すのに時間がかかる可能性はありえます。
 
 唯一資金を抑えて開業できる方法と言えば元調剤薬局店を居抜きで借りる」パターンですが、そう言った場所は中々見つけられません。
 見つけられたらまさに天啓、独立開業するタイミングだと言えるのではないでしょうか。
 
 
 最後に資金調達と言えば日本政策金融公庫の創業融資制度ですが、調剤薬局は数ある業種の中でもどちらかと言えば融資を受けやすい部類に入ります。
 店舗経営のランニングコスト等も考えると、余程資金が潤沢にある場合でなければ融資を受けるのは必須であると考えます。
 
 
 開業に必要な資金については、次のエントリー「調剤薬局の開き方(2)ー開業資金ってどれくらい必要?ー」でより詳しくお話ししています。

5.まとめ

 調剤薬局に限らず、事業を開業すべき時とはタイミング・場所・資金が揃った時です。
 場所や資金があっても開業すべきタイミングでないときは事業自体に苦労しますし、場所と資金がなければそもそも開業できません。加えて、今回はお話ししませんでしたが開業には創業事業計画も必要となります。
 
 しかしそれより何よりも、創業には「オーナーのやる気と熱意」がもっとも必要なものです。
 少なくとも事業を軌道に乗せるまでは、やる気と熱意は持ち続けなければなりません。
 
 しかしやる気と熱意は儚いもので、何らかの障壁や分からないことがある度に、容易くどこかに行ってしまいます。
 開業計画の途中でふとした拍子にやる気を失い、多額の費用をかけながらもそのまま頓挫するケースはいくつもあります。
 
 当事務所はそう言った「計画途中の頓挫」はできるだけなくなって欲しいと思っており、行政書士のスタンダードな業務である許認可の取得だけでなく、事業開業に至るまでの道中の整備や計画の作成等、いかに創業者のやる気や熱意を保ったまま事業開業ができるかを考えております。
 
 事業創業は一人で悩みながら計画を進めていくよりも、スタートアップのプロが補助輪になりながら進めていく方が遥かに効率的です。
 
 調剤薬局開業を考えている場合は一人で悩まず、まずはご相談からでもぜひ、当事務所までご連絡ください。
 
 
 さて、次のエントリーからは調剤薬局の創業について、より具体的にお話ししていきたいと思います。
 
 次回、「調剤薬局の開き方(2)ー開業資金ってどれくらい必要?ー」に続きます。
 
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