調剤薬局の開き方(5)ー色々必要、開業のための4つのことー

 このエントリーは「調剤薬局の開き方(4)ー開業場所は○○がいい!」の続きです。
 
 前回までのエントリーで「資金」「計画」及び「場所」についてお話ししました。
 今回のエントリーでは調剤薬局開業に際して「タイミング」含めて、「資金」「計画」「場所」の三本柱以外に必要な4つのことをお話ししていきたいと思います。

1.開業の「タイミング」

 独立開業のタイミングは人それぞれですが、例として挙げれば次のようなパターンが多いと思います。
(1)懇意にしている医師が独立開業する際に、診療所近くに開業するパターン
 
(2)廃業予定、あるいは売りに出されている薬局を店ごと買い取るパターン
 
(3)都合よく病院や診療所近くの土地建物が手に入るパターン
 
(4)大手薬局法人のフランチャイズで開業するパターン
 王道は(1)パターンです。医療機関の近くで確実に開業できる上に、先生との関係も初めから良好です。
 
 独立志向の人はアンテナを張って(2)や(3)を狙っていますし、調剤薬局だけでなくいろいろなことをやってみたい人は(4)が視野に入ると思います。
 
 上記以外のパターン……例えば資金が集まったところで持ち家を改装して開業!と言ったパターンも無くはないですが、医療機関の近くでない限りはやはり茨の道を歩むことになるでしょう。
 
 
 つまるところ(4)以外は「医療機関近くの立地が押さえられる」に集約されますので、調剤薬局開業のタイミングは資金がある程度集まっていることを前提に「いい立地で開業できる時」ではないかと思います。
 (もちろん事業計画も必要ですし計画作成には時間がかかるものですが、事業計画については行政書士や税理士のようなプロに頼めば時間についてはなんとかなります。)

2.開業に必要な時間とタイムスケジュール

 創業者一人が正攻法で開業しようとすれば、貯蓄が0からのスタートの場合少なくとも2年から3年はかかります。
 資金が用意できていたとしても、立地の調査や決定、各種手続きその他諸々で1年は時間がかかります。
 特に日本政策金融公庫等から融資を受ける場合は入念な事業計画書が必要となり、場合によってはそれだけで半年から1年以上時間を費やすことになってしまうかもしれません。
 
 と言う訳で、開業までの計画は余裕を持って立てておいた方がいいでしょう。
 
 開業までのタイムスケジュールのモデルケースを下記の表の通りとなっていますので、是非参考にしてみてください。
 スケジューリングは「資金」「計画」「場所(及び契約)」「その他(内装や許認可等)」の4ラインで進めていくと分かりやすいと思います。
 
 事業計画書作成の段階で「計画」はほぼ完成している必要がありますし、「計画」を完成させるためには「資金」と「場所」を確定させておく必要があります。
 
 事業計画書までの段階であれば時間的な制約が少なく余裕を持って進められますが(逆に制約がないため計画が頓挫しやすいのもこの時期です)、事業計画書を作成し融資を申し込んでからは開業まで秒読みとなり大変忙しくなります。
 
 特に開業一か月前は目が回るような忙しさだと思いますので、許認可等外注できるところは外注しておく等しておいた方がいいと思います。

3.内装業者についての話

 飲食店開業や一般的な事務所の開業とは違い、調剤薬局は特殊な作りが必要となる場合があるので内装業者の選定には時間がかかることが見込まれます。
 特に地方の場合は業者の数が少なく、調剤薬局を手掛けたことのない内装業者も多いため下手をすれば地元の内装業者が見つからない可能性もあるでしょう。
 
 「内装なんて拘ってもしょうがないし、開業できればいいよ」なんて思うかもしれないが、調剤薬局の許可申請には内装に関する平面図も要求されますし、保健所職員による事前調査もあります。
 保健所の基準に満たない箇所があれば基準を満たすまで開業はお預けとなりますし、最悪の場合「内装の基準を満たすことできないので開業できません」なんてケースも現実によくあることです。
 
 つまり、調剤薬局の開業には経験のある内装業者か、経験はないまでも見切り発車せずに保健所(や行政書士)に対して問い合わせできるような業者を見つける必要があります。
 
 内装工事は納期が短ければ短いほど料金が高くなる傾向があるため、特別な内装が必要となる調剤薬局は飲食店等と比較すればできるだけ早いうちに内装業者を見つけておいた方がいいです。

4.開業に必要な許認可の話

 調剤薬局開業に必要な許認可は「薬局開設許可申請」及びそれに付随する許可・届出となります。
 
 薬局開設許可申請の提出先は管轄の保健所であり、標準処理期間は大体14日から20日程度(土日祝日含まず)です。
 つまり、完璧な書類を提出すれば大体3週間から1か月程度で許可が貰えることになります。
 
 保健所としては普通の期間でして特別長かったりするわけではないのですが、付随する許可や届出の関係でギリギリの期間で申請するよりも、もう少し余裕を見ておいた方がいいかもしれません。
 特に厚生局の「保険薬局の新規申請」や「施設基準の届出等」は申請締切り日が月1回となりますので、ギリギリの申請だと保険薬局としてのスタートが切れない可能性もあります。
 
 申請手数料については2万9000円から3万5000円くらいと、都道府県によって若干のブレがあります。例えば東京都であれば3万4100円ですし、神奈川県であれば2万9100円です。
 地方については大体2万9000円なので、東京以外はそのくらいで見ていていいかもしれません。岩手県は3万1700円でしたが。
 
 許認可については書類提出の他に事前相談等が必要となっている保健所も多く(と言うよりもほぼ全てでしょうか)、何度か保健所を行き来する場合があります。
 また、薬局開設に関係する大体の許可及び届出は郵送・オンライン申請不可なので、窓口にて手渡しする必要もあります。
 
 
 さて、許認可については我々行政書士の主戦場です。
 許認可には簡単なものもありますが、国家資格である行政書士と言う職業があることからも分かる通り許認可申請は非常に面倒なものも結構あり、残念ながら調剤薬局開業の許認可は面倒な部類に入ります。
 
 もちろん一人でやってやれないこともないと思いますが、一から勉強して頑張って自分で許可を取るよりは、手前味噌になりますがいくらか報酬を支払ってでも行政書士に頼んだ方がいいのではないかと思います。
 
 
 こと調剤薬局開業に必要な許認可は、本体である「調剤薬局開業許可」の他に毒物劇物販売業登録や麻薬小売業者免許、高度管理医療機器販売業・賃貸業許可等があります。
 扱う薬品によって届出が多岐に渡っており、更に保健所によっても申請すべき許可がマチマチであるため一から調べるのはかなり大変な作業となることが予想されます。
 
 また、開業に関する許可や届出以外にも、公費関連の届出や保険薬局指定の為の厚生局に提出しなければならない書類が数多くあり、慣れない人間が一つ一つやっていくのはとても難しいでしょう。
 
 「書類が抜け落ちてて数か月保険適用が受けられない期間があった」なんてこともよくある話です。
 
 こう言うことがあるので調剤薬局開業には是非行政書士に依頼して欲しいのですが、行政書士にとっても中々大変な許認可であり業務に「調剤薬局開業」を謳っている行政書士でなければ断られてしまうこともしばしばあります。
 
 正直行政書士としては、同業者がやるべき仕事を断っているのは忸怩たる思いではあるのですが、当事務所ではもちろん調剤薬局開業の許認可を請け負っていますので、相談だけでもいいので是非連絡してください。お待ちしております。

5.まとめ

 事業は「資金」「場所」さえあれば開業はできます。しかし、安定した経営を続けるためには「計画」「タイムスケジュール」が必要ですし、うまく軌道に乗せたいのであれば「タイミング」「運」も重要になってきます。
 調剤薬局は計画とタイミング、そして場所を間違えなければ他の業種と比べれば安定経営が続けられる業種ではありますので、必要以上に開業を恐れることはありませんが入念な準備はしておいて欲しいと思います。
 
 
 ただし、調剤薬局は「ためしに副業から始めてみよう」がなかなかできない業種なので、開業の判断は中々難しいと思います。
 
 事前に経験を積むとしたら体力面や仕事面で許されるなら本業の傍ら、週末や仕事終わりに薬剤師のアルバイトをして経験を積む形になるではないでしょうか。
 雇われ薬剤師として経験を積める職場が比較的多いのは幸いではないかと思います。
 
 
 さて、調剤薬局開業につきまして(1)から(5)までの連作となりすべて読むには結構な分量になってしまいましたが、全て目を通して頂ければ調剤薬局開業に関する基礎知識や必要なことの知識はついたのではないかと思います。
 
 文章で読むだけでは分かりづらい、掴みにくいところもあると思いますので、調剤薬局開業をお考えの方は是非一度、当事務所までご相談頂けましたら幸いです。
 
 
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