調剤薬局の開き方(4)ー開業場所は○○がいい!ー

 このエントリーは「調剤薬局の開き方(3)ー事業計画の作り方ー」の続きです。
 
 前回までのエントリーで「資金」及び「計画」についてお話ししました。
 今回のエントリーでは開業の重要な要素の一つである「場所」についてお話ししていきたいと思います。
 
 「タイミング」についても今回のエントリーでお話しする予定でしたが思いのほか長くなってしまったので、「タイミング」については次回に委ねたいと思います。

1.一般的な儲かる店の立地ってどんな場所?

 一般的な儲かる立地の店舗は「人の往来がある」「人の目にとまりやすい」「競合が少ない」の三要素が揃っているところです。
 
 つまり、都市圏の駅前ビル1階は人の往来が多く人の目にもとまりやすい、駅前は店舗の数自体は多いものの業種も多く実質的に競合が少ないと言う三要素を備えたところと言えるので、空いているなら誰もが出店したい立地です。
 
 しかしながら現実的に考えると「都市にある駅前ビル1階に出店」なんて個人事業主にとっては当たり前のように無理な話でもあります。
 
 まず誰もが狙っている立地であるため競争率が高い、とても高いです。競争率が高いため必然的に地価が上がり賃料も高くなります。
 そして一度物件を押さえてしまったら、そこで商売を続けられる確率が高いため、そうそう手放すことはなくなります。
 
 そう言うところは大体大手企業のチェーン店が入るものであり、個人事業主が出店できる余地は基本的になさそうです(中には運よく出店できている個人事業主もいますが)。
 
 
 と言う訳で他の場所を探すことになりますが、流石に駅前ビルの低層階とは言わないまでも、駅前ビル中層階以上、あるいは駅前から徒歩5分離れたところまで行けば個人事業主が出店できる可能性は残されているので、例えば「客の出入りが多い飲食店を開きたい!」と言う個人事業主はこの辺りを狙っていくことになります。
 
 もちろんその辺りでも住宅地付近と比べれば当然に賃料が高く、ランニングコストがペイできる業種でなければ現実的に考えて出店できません。
 
 
 地方であれば、幹線道路の道路沿い「人の往来がある」「人の目にとまりやすい」「競合が少ない」の三要素が揃う場所です。
 
 幹線道路沿いについては公共交通機関が手薄である可能性が高いため自動車客を目当てにすることとなりますが、道路沿いには道路沿いなりの苦労があります。
 
 例えば「産業道路であり地元民が少ない」「街路樹・カーブ等で視認性が悪い」「立地の関係で駐車場が入りにくい」と言った条件が重なる場合には集客が期待しにくくなるので、店舗としては避けられる傾向にあります。
 「賃料が安かったりいい立地なのに店が入れ代わり立ち代わりで滅んでいく」と言った場合は注意が必要です。

2.調剤薬局が儲かる場所はどこなの?

 ご存じだとは思いますが、医療機関の近くが最適解です。
 
 特に大病院や診察の多い診療所の近くであれば商売は格段にうまくいきます。
 逆に医療機関が近くにないにも関わらず、上記の「一般的に儲かる立地だから」と言って駅前の立地で商売を始める理由はほぼありません。
 (と言っても駅前は何らかの診療所や医院がある可能性も高いので、大体の場合調剤薬局開業の理想的な立地となりえますが。)
 
 調剤薬局の場合は「何かのついでにふらりと立ち寄る」と言った客はターゲットにしていないため、医療機関の近くと言うことさえ拘れば駅近く等の立地はあまりこだわらなくていいと思います。
 
 ただし、店舗として最低限「人の往来が多少なりともあるところに看板がある」「医療機関の近くから見える場所にある」「医療機関に対して調剤薬局過密地域ではない」と言うことは心がけたい次第です。

3.失敗した!場所選びでやっちまった事例の紹介

 「医療機関の近くの立地を抑えた、さあ、これからバリバリ稼ぐぞー!」と思ったのも束の間、「全然お客さんが来ない…」それ以前に「開業すらできなかった…」なんてケースもあります。
 
 この章では調剤薬局の立地選びで失敗する具体的な事例を挙げたいと思います。
 
 
(1)開業場所近くの医療機関は医薬分業を採用していなかったパターン
 医療機関がすぐそばにあっても、医療機関自身が薬を出している場合は周辺の薬局には患者が来ません。
 
 目星をつけていた診療所近くに薬局がなくラッキーと思い開業したものの、診療所のオーナー先生の身内が薬剤師として診療所内で調剤しており、診療所内で完結している……みたいなパターンもあります。
 
 特に周囲に医療機関がその診療所ひとつしかない場合は難しく、下手に宣伝や呼び込みをしようものなら診療所の先生の逆鱗に触れてしまいその町で商売ができなくなる可能性も高くなります。
 お医者さんはその町の名士になってることが多いので、逆らえないですよ…。
 
 
(2)診療所近くに開業したが、診療所の先生は高齢であり後継ぎもいないパターン
 診療所近くで開業できたものの、診療所の先生がご高齢である場合は注意が必要です。
 
 診療所があるうちは何とかなるものの、先生が引退し後継ぎもなかった場合は必然的に診療所は閉鎖となり、あとには調剤薬局だけが残されることになります。
 
 それまでの間に周辺住民と良好な信頼関係が築けていればいいのですが、医療機関が近くにない調剤薬局の経営は厳しいものがあるので、(1)と合わせて開業候補地近くの医療機関の実態はしっかり調査しておいた方がいいと思います。
 
 
(3)医療機関が3院ありその中間地点に調剤薬局を開業したのに、どこからも患者が来ないパターン
 これも実際にありがちな例ですが、大型病院及び診療所2院がある地域の丁度中間地点の土地があいていたのでその土地を買って調剤薬局を始めた方がいました。
 しかし大型病院及び診療所2院のどこからも物理的に目視できない場所であり、しかもどの医療機関も近くに調剤薬局があったためそこに患者が流れてしまい自分の薬局には誰も来ない……みたいなこともあります。
 
 いくつかある医療機関の中間地点と言うのはいい立地のように見えますが、お客さんのほとんどは医療機関から見えるところの調剤薬局を利用することが多いため、中途半端どころかどこからもお客さんが来ないと言う結果になりやすいです。
 
 やはりどこか一機関にしぼって、そこから見える場所に薬局を開設する方がいいと思います。
 
 
(4)医師の先生に呼ばれ開業しようと土地を買ったが、行政の規制に引っかかり開業が不可能となったパターン
 購入した土地の場所が第一種低層住居専用地域や市街化調整区域だったりした場合、調剤薬局が開業できない場合があります。
 
 診療所は基本的に都市内のどの用途地域でも開業することができますが、調剤薬局は一般的な小売店と同じ分類であるため第一種低層住居専用地域では原則開業することができず、また、店舗規模によっては第二種低層住居専用地域等でも制限を受けることになります。
 (もちろん、例えば兼用住宅として居住空間が2分の1を占めている等の事情があれば、第一種低層住居専用地域でも薬局を開業できる等の例外はあります
 
 そして市街化調整区域ですが、そもそも住宅の建築すら制限がかかるため建物が建てられない可能性も出てきます。
 
 この辺りは調査の方法はありますが自分でいちいち調べていくのも大変だと思いますので、やはり行政書士や建築士等の専門家から詳しく話を聞いた方がいいと思います。
  
 
 
 医療機関の近くで開業できれば調剤薬局は比較的安泰な業種ではありますが、全ての調剤薬局がうまくいくわけではないので、少なくとも上に挙げた例のような失敗は避けたいところです。

4.オンライン薬局は開業できるの?

 2014年6月から、一部の一般医薬品についてはオンラインでの販売が認められネットショップ等で販売できるようになりました。
 
 ネットショップで販売する場合でも薬剤師や登録販売者の資格者が常駐している必要があるため、薬剤師にとっては嬉しい参入障壁となっておりオンライン薬局については一考の余地があるようにも見えるでしょう。
 
 しかし残念ながらネットショップには致命的な制限があり、処方薬は販売することができず、「調剤薬局」についてはネット上で開業することができません。
 
 現在のところ「一部の例外」を除いて、「調剤薬局」はネット上では開業することができないため選択肢には入らないでしょう。
 
 
 ここからは余談になりますが「一部の例外」と言うのが厚労省サイトにもある「新型コロナウイルス感染症の感染拡大を踏まえたオンライン診療」(2020年10月現在)となります。
 調剤薬局に関して言えば、「厚労省登録の医療機関によるオンライン診療を受けた患者に限り、厚労省登録の調剤薬局によるオンライン処方が受けられる」と言った内容になります。
 
 しかしながらあくまで例外規定でありこの先何年・何十年もこの例外が適用され続けるか分かりません。
 また、実際にオンライン診療を受ける患者の数もオンライン調剤を利用する数も未知数です。
 
 「一部の例外」を当て込んでのオンライン調剤薬局は無謀な挑戦ではないでしょうか。

5.まとめ

 調剤薬局が成功する立地は他の業種と比べて分かりやすいと言えます。
 
 立地が分かりやすいと言うことは成功しやすい・失敗しにくいとも言えますが、3で述べたように失敗パターンもいくつかあるので、開業の際には失敗パターンも留意して色々と調査した方がいいと思います。
 
 今回お話ししたように新規開業は医療機関の近くが最適解ではありますが、もちろんのことながら販売戦略や広告方法によっては住宅地のど真ん中や医療機関のない地域商店街でも充分やっていける余地はありますので、その辺りは経営者として腕の見せ所ではないかと思います。
 
 さて、今回までで開業三本柱である「資金」「計画」「場所」をやってきました。
 次回は「タイミング」含めて開業に必要なその他諸々についてお話ししたいと思います。
 
 
 
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