飲食店の広告戦略(1)―広告って必要なの?―
どんな商品であろうと、存在が知られていないまま売れると言う事はありません。
「駅前で好きなように弾き語りをしていたらいつの間にかファンが増えてて、音楽レーベルからスカウトされてメジャーデビュー」みたいなサクセスストーリーなんてかっこいい事この上ないですが、現実世界で達成するのはほぼ無理でしょう。どんなものでも売れるには地道なマーケティング活動が必要となります。
それは飲食店であっても同じです。
「美味しい料理を作っていればいつかはお客さんでいっぱいになる」は確かにそのとおりです。「美味しい料理がある」と言う事は立派な広告手段の一つでもあります。
しかしそもそも存在が知られていなければ、「美味しい料理がある」と言う事実が有効に機能することはありません。
集客に必要なのは、ターゲットに店の存在情報が届くことであり、そして集めたターゲットを離さないことです。そのために飲食店がどのような広告戦略を取れるのか、今回のエントリーは飲食店のマーケティングのお話です。
1.広告の役割
広告には2つの役割があります。1つは知名度を上げ新規顧客を獲得すること、そしてもう1つはリピート率を上昇させることです。新規顧客の獲得もさることながら、常連さんになって貰うことも、飲食店にとって大切なこととなります。
飲食店の場合、ほとんどのお客様が一見さんです。しかし何度か続けて来店してくだされば、常連客として定着してくれる率も高くなります。
よく言われるのは「2回来てくれれば常連見込み、3回目からは常連客」と言う言葉です。飲食店について言うと短い期間に3回も来店してくだされば、その後は継続的に利用して頂ける可能性も高くなります。
新規顧客の獲得と同時にリピート率をどれだけ上げられるかが、飲食店におけるマーケティングの鍵となります。
2.広告の為の下拵え
広告を打ち出すためには、まず自分の店の特徴やメインターゲット、そして利用目的を客観的に分析する事が必要です。まず来店客を観察して記録を残し、利用目的を把握することが重要となります。
例えば昼時にスーツ姿の男性が多ければサラリーマンの昼食として利用されている、15時前後に小さな子供連れの女性が多ければママ友のお茶会に使われていることが分かります。
また、会話のできる常連さんがいれば、「この間来てたお客さんは町内会のご隠居だよ」と言う話や「この店は〇〇会社の社員が多いね」みたいな話が聞けるかもしれません。
視覚的に分かりやすい情報から常連さんに聞いた小さな話まで、細かく記録を残し大凡の客層を把握することができれば上出来です。
開業して間もなければ、ターゲットはある程度目星がついていると思います。現在そのターゲット通りの客層になっているかそれとも実情はもっと別の客層が多いのか、比べてみる事もできます。まずは年代・性別・拠点の3点を軸に、中心となっている客層を分析してみて下さい。
お客様の利用目的やメインターゲットを分析できれば、効果のある広告も見えてきます。広告を出す前にまずは客層やターゲットを分析し、データにすることが重要です。
3.新規顧客獲得のための広告方法
新規顧客を獲得するためには、不特定多数にお店のことを知ってもらう必要があります。潜在顧客やターゲットとする層にお店の情報を届ける必要がありますので、可能な限り情報をばら撒く作戦が向いています。
大切なのは臆さないことです。
「知ってもらうために広告するのは恥ずかしいし……」「チラシとかポストに入れて怒られない?」なんて考える必要はありません。広告をすることによって怒ったり嘲笑してきたりする人達はそもそも最初から顧客にはならないと言う事です。
ターゲットにお店の情報が届くように、しっかりと広告宣伝をしていきましょう。
さて、肝心の新規顧客獲得のための広告方法ですが、大きく分けて4パターンに大別することができます。
① アナログ媒体広告
アナログ媒体広告は主にフリーペーパーや折り込みチラシ等があります。近年はインターネット広告に押されていますが、老年層や主婦層をターゲットにする場合はまだまだ有効な広告手段です。店舗周辺地域に対して広告をしたい場合に使うことになります。
② インターネット広告
主に店舗ホームページやSNS、そして飲食情報サイトへの掲載があります。特に「ぐるなび」や「ホットペッパー」等の飲食情報サイトは、20代~40代のスマホをいこなす人達に対して有効な広告手段です。全国規模で広告することができますので、コンセプト系飲食店の宣伝にも向いています。
③ マスコミ媒体広告
分かりやすいところではテレビやラジオでしょうか。地域密着のFMラジオであれば数千円から数万円程度の広告費で出稿することができます。テレビCMは地方テレビでも100万円近くの広告費が掛かるので駆け出し飲食店には厳しいものと思われます。
バスの中吊り広告やグルメ雑誌への掲載もおすすめですが、最初のうちはあまり考えなくてもいいかもしれません。
④ 店頭広告
店の看板や店頭POPも新規顧客獲得の為には必須と言えます。カフェや居酒屋であれば、店の前に黒板を置いてその日のおすすめメニューやサービス情報を記載してもいいのではないかと思います。ただし道路への設置は警察から指導が入る場合がありますので、敷地内にしておいた方がいいでしょう。
4.リピーター獲得のための広告方法
何度も言っていますが「おいしい料理がある」と言う事は広告手段の一つです。他にも「立地がいい」「値段が安い」「内装や調度品に拘っている」等も立派な広告手段です。つまるところリピーターを獲得するための広告手段とは「店の強みを作る」と言う事でもあります。
もちろん「店の強みを作る」事以外にもやれることはありますので、その方法も紹介します。
① スタンプカード・ポイントカードの発行
スタンプカードやポイントカードは再来店の動機付けになります。スタンプやポイントの溜まり具合によってリピート回数の調査もできますので、可能であれば実施していきたいところです。
② メールマガジン・クーポン券付きDMの発行
メールマガジンやダイレクトメールを送る意図は、「好評価をしてくださっているお客様に対して重ねてプラスの評価を獲得する」ことにあります。
再来店の機会を伺っているお客様に対して「今週のおすすめ料理」や「割引メニュー」等の情報をDM等で送付すれば、リピートしてくれる確率は高くなります。
誰彼構わず送って効果のあるものではありませんが、好評価をしてくれているお客様に対しては有効な広告手段です。
③ ブログやSNSの更新
ブログやSNSの更新もリピーター獲得の手段になります。
メールマガジンの発行に近い理由にもなりますが、わざわざSNSをフォローしてくれたりブログを見たりしてくれている人は店に対して好印象を抱いているお客様です。こまめに更新することで店舗情報の発信や店や店長自体のコンテンツ化にも繋がります。
5.まとめ
いかに美味しい料理があってもそれが知られていなければお客様は来ません。逆に、いかに新規顧客を呼び込んでも一見さんばかりでは経営は安定しません。特に飲食業はライバルも多く新規参入や撤退も頻繁に行われている業界ですので、尚のことバランスの取れた広告戦略が必要となります。
「集客」と「リピート」の平衡を取りながら効率よく店舗の広告をしていきたいところです。
さて、今回のエントリーでは広告の概論をお話ししました。次回はそれぞれの広告がどのようなものなのか、どこをターゲットにしているかをお話ししていきたいと思います。