飲食店の広告戦略(3)―飲食情報サイトとの付き合い方―

 前回のエントリーでは広告方法についてお話ししました。今回のエントリーでは広告方法の一つ、飲食情報サイトについてお話ししたいと思います。
 
 
 
1.飲食情報サイトとは?
 
 
 一口で言えば、インターネット上の飲食店検索サービスです。「食べログ」や「ぐるなび」、「ホットペッパーグルメ」と言えば分かりやすいでしょうか。実際に使ったことはなくても、検索結果で表示されて知っているケースも多いと思います。
 
 現在、飲食店を探すのに飲食情報サイトを使っている人はかなり多く、特に20代から40代については60%以上が検索等の利用経験者と言う統計が出ており、「単純に店の情報を調べたくてサイトを覗いたことがある」と言う層にまで裾野を広げればインターネット利用者のほぼ100%が利用しているのではないかと思います
 
 飲食情報サイト自体は20世紀の頃から存在していましたが、特にスマホが一般的になった5~6年ほど前から爆発的に利用者数が増えており、現在ではサービスを提供している会社も30社以上(ひょっとしたらもっと多いかもしれません)が存在しています。正直ここまで多いとは思いませんでした。
 
 
 
2.飲食情報サイトのサービスの内容
 
 
 飲食情報サイトに登録すればサイト内に店舗用の固有ページが与えられ、テンプレートを埋めていくだけで店舗の情報管理やインターネット予約、広告等が手軽にできるようになります。各社のサービスもそれぞれ特徴を出しており、例えば「一休.com」であれば高級店、ハイクラス店が掲載対象であり、「Retty」であれば若い女性やお洒落を意識している層が顧客の中心です。
 特に開店したばかりの高級店であれば「一休.com」への登録が必須なのではないかと思うくらい、情報の拡散や新規集客に役立っています(※「一休.com」への掲載には審査が必要となります)。
 
 掲載については有料プランと無料プランを用意しているところが多いですが、前述したようにサービス提供会社自体30社近くもありますので、全てに登録して全てを管理するなんてことは不可能です。自店舗の特徴と客層を考えて、有料プランは1~2社程度に絞った方がいいと思います。
 
 
 
3.飲食情報サイトの存在は功罪半ば
 
 
 飲食情報サイトの存在自体は新規顧客獲得に役立ちますが、実際のところ存在自体が功罪半ばのところがあります。特に「食べログ」等では顧客の口コミによって店舗情報を掲載するスタイルを取っているため、店側の意図することなく情報が掲載されてしまうことが多くあります。
 最近でも「食べログユーザー出禁」問題が各SNSやインターネットメディアで話題になっていました。
 
 
 飲食情報サイト掲載に関する懸念点は次のものが挙げられます。
 
 
① 勝手に登録されることが多い
 
 特に口コミ型のサイトでは勝手に登録される上に、削除依頼を出すもなかなか削除してくれないと言う状況です。
 サイトによっては訴訟を起こすしかないと言うところもあります。
 
 
② ネガティブキャンペーンで嘘の口コミが書かれる場合もある
 
 ランキング制を取っているところではわざと最低ランクの評価をしてくる人もいます。
 「消して欲しければ有料プランに切り替えろ」等の脅しをかけてくる阿漕なサイトもあるようです。
 
 
③ 有料会員料金は安くない
 
 掲載料の相場は月額1万円から10万円です。中央値は大体3万円でしょうか。
 駆け出しの飲食店にとっては安くない掲載料です。
 
 
④ ドタキャンが増える
 
 インターネットによる手軽さからか、無連絡のドタキャンが非常に多くなります。
 ドタキャンを嫌って予約管理システムを利用せず、電話予約のみとしているところもあります。
 
 
⑤ リピーター獲得には向かない
 
 新規顧客獲得には向いていますが正直リピーターの獲得には一切向いていません。
 リピーター獲得の為には飲食情報サイト内のページのみならず、自店舗のサイトやブログも持つ必要があります。
 
 
⑥ 高級店の場合ブランディングの妨げになる場合がある
 
 様々な層に露出するため客層が変わってしまう可能性もあります。
 特に高級店は客層が変わってしまうことが致命傷になりかねないので、登録する飲食情報サイトは吟味する必要があります。
 
 
 
4.飲食情報サイトとの付き合い方
 
 
 客層やサイトの特性から、主に繁華街やビジネス街に店舗を構える飲食店に向いています。特に一般的な大衆居酒屋の場合は店舗コンセプトにもよりますが、閲覧者の多い「ぐるなび」か「ホットペッパーグルメ」のどちらかには登録しておいた方がいいと思います。
 
 逆に住宅地に近い地域の飲食店や、コンセプト系飲食店には、飲食情報サイトへの登録は向いていません。
 
 地域の飲食店の場合はポスティングやチラシ等のアナログ広告が未だに有力です。と言うよりも、最近はグローバル疲れからか地域密着が進んでおり、近場に常連の店を持つ客層が増えているように感じます。
 
 コンセプト系飲食店もニッチ産業であるために飲食情報サイトは期待できません。同じインターネット広告でもSNSや同志のコミュニティ内で広告する方が圧倒的に向いています。お金と時間をかけて広告するのならSNSの方に力を入れた方がいいでしょう。
 
 飲食情報サイトも誰彼構わずの大手から客層を限定しているところまで様々です。店舗情報が勝手に掲載される問題やネガティブキャンペーンで嘘の口コミを書き込まれる問題も未だに多く存在します。しかしながら新規の集客には大きな力になってくれるものでもありますので、広告手段の一つとして知っておく必要はあると思います。
 
 さて、次回はリピーター獲得の為の広告方法について、お話ししたいと思います。