実店舗よりも大変?キッチンカーの魅力と制約

キッチンカー……なんとも魅力的な響きです。
気ままに自動車を運転して立ち寄った先々でおいしい料理を振る舞う……非常に惹かれるものがある商売形式だと思います。
しかし、現実的にキッチンカーで開業となると実店舗よりも難しい壁が立ちふさがるかもしれません。
特に、「飲食店を経営したいが資金が心許ない。そうだ、自動車を改装したキッチンカーなら安上がりに開業できるのではないか?」と思っている場合は、考えを改める必要があります。
実際のところキッチンカーでの飲食店開業はそうそう安上がりにできるものではなく、トータルコストは実店舗よりもキッチンカーの方がかかってしまう可能性があります。
今回のエントリーでは、キッチンカーの魅力と難しさをお話ししたいと思います。
1.キッチンカーの魅力と制約
「気ままに自動車を運転して立ち寄った先々でおいしい料理を振る舞う」と言うのはキッチンカーの魅力であり醍醐味です。
実際一つの保健所で許可さえ貰えれば日本全国どこでも営業できますし、好きな時間に開店して好きなタイミングで料理をすることができます。
しかしながら、もちろん全ての場所で自由に営業できると言う訳ではありません。
まず原則として、どの場所でも土地の管理者は存在しますので、営業予定の場所で管理者に許可を貰わなければなりません。
また、風の向くまま根無し草と言う訳にもいきません。
営業許可の段階で必ず駐車場が必要になってきますし、ほとんどのケースで仕込み場所の登録も要求されます。
加えて自動車の衛生面をガチガチに固めなければ、営業許可が降りにくい形態でもあります。
特に東京等の都心について言えば、道路占有等の問題もあるのか保健所も営業許可に及び腰です。
どちらかと言えば、都心で許可を取るよりも少し外れたベッドタウンや郊外で許可を取る方が向いているように思います。
※2020年5月24日追記
近年は東京都心でもキッチンカー営業許可取得は随分と緩やかになっています。
有楽町駅前である東京国際フォーラム広場等でも随分とキッチンカーでの営業を見かけるようになりました。
始めるなら今がチャンスかもしれません。
2.実際にキッチンカーを始めるにはどんな手続きや設備が必要?
① まずはキッチンカーを手に入れよう
何よりも先に、本体である自動車が必要です。
キッチンカーで屋台営業をするには、自動車検査法人の構造変更検査を受けて8ナンバーを取得しなければなりません。
最近はキッチンカーのレンタルや改装を専門にしている会社も増えてきました。(例として挙げると、株式会社T・ARAやケータバンク株式会社と言った会社があります)
レンタル等せず自前で用意する場合は、オーダーメイドに拘らないのであれば、中古車等を購入した方が安くて楽ではないかと思います。
余談ですが、8ナンバーを取得すると税金が安くなる代わりに車検の期間が短くなると言うメリットデメリットがあります。
② 許可や営業で気を付けなければいけないことは?
地域によって取り扱いは異なりますが、特に東京都やその他の都心の場合、前提条件として調理スペースをキッチンカーで完結させることはできません。
ほとんどのケースで固定の仕込み場所が必要です。
厄介なことに、この仕込み場所は通常の家庭のキッチンでは保健所の許可がおりず、事業者用の改装が必要となってきます。
結局どこかしらで固定の仕込み場所及び駐車場を持たなければいけないため、屋台車でやるよりは店舗を持ってやった方がいいのではないかと思ってしまうほどです。
※ただし、この仕込み場所は何も自店舗でやらなければならないと言うわけではなく、例えば知り合いの飲食店の厨房を間借りして行っても大丈夫です。
そう言ったことができるなら、実店舗を持つよりも格段に安上がりに開業することができます。
また、営業許可を貰えたら、次は商売の場所を気を付けなければなりません。
「駅前とかの路上で売れば人通りが多く儲かるのでは?」と思うかもしれませんが、道路の許可を出すのは警察であり、基本的にキッチンカーでの営業について言えば、道路占有許可を貰える可能性は低いです。
裏技的に数十分ごとに場所を移動しながら商売をするやり方もありますが、場所を固定できるわけではないしグレーゾーンでもありますのであまりお勧めはできません。
③ では、どう言うところであれば集客ができるのか?
例として挙げれば、大きな駐車場のあるスーパーマーケットであれば、許可をしてくれるのは行政ではなくその敷地の管理者であるため、営業許可を貰えるケースが多くなります。
また、公園については公園管理者の許可が必要ですが、同じ行政でも警察と違って許可してくれる場合が多いです。
それぞれ許可を出してくれるところは違いますが、自動車の入れる海岸やキャンプ場でも道路と比べると格段に許可が貰いやすくなっています。
特にレジャー施設の近くはお客さんの財布の紐も緩みがちなのでおすすめです。
ただし、人が多いところでは同業者同士の縄張り争いがあるケースが多いので、注意して欲しいところです。
特に、屋台関係は反社会勢力のしのぎとなっている場合もありますので、そう言ったところとは絶対に関わらないことが重要となります。
3.まとめ
3.まとめ
キッチンカーは確かに魅力的です。
しかし、キッチンカーだからと言って安上がりに済んだり営業許可が簡単に取れるわけではありません。
結局のところ実店舗を持つのと同じくらいコストと時間がかかるので、飲食業一本で食べて行こうと言う人には向かない形態です。
個人的には、都心で安上がりに飲食店を開業するのであれば、ゴーストレストランの方が向いているように思います(ゴーストレストランについては過去のエントリーを参考にしていただければ幸いです)。
ただし、週末の趣味的に開業するのであれば、実店舗よりもランニングコストが抑えられるのでいい向いていると言えます。
実際に平日は会社に勤め、週末にキッチンカーで料理を提供している人も結構いらっしゃいます。
また、現在営業中の飲食店が2店舗目としてキッチンカーを選ぶのは戦略的に面白いと思います。
仕込み場は本店にすればいいわけですし、調理に関するノウハウもあるので実店舗よりも安上がり、かつ、本店ではできない魅力を伝えることができます。
キッチンカー含めて飲食店開業には様々な形態がありますので、自分のライフスタイルや営業方法に合った開業をすることが望ましいです。