創業資金の調達方法(2)ー融資までの流れとタイミングー

 
 事業がうまくいかず事業を畳む方もいますが、個人事業の場合、中には低金利の公庫からの融資や銀行融資ではなく、街金やカードローンで資金を調達して金利の高さに借金を返せず破産する方もいらっしゃいます。資金調達は事業の根幹でもありますので、様々な資金調達方法を勉強し、最適な資金調達を心がけていきたいところであります。
 
 さて、前回のエントリーで新創業融資制度の概要についてお話しました。今回は実際の融資の流れと融資のタイミングについてお話したいと思います。
 

1.公庫の新創業融資実行までの流れ

 新創業融資の実行及び返済開始までの流れは、下記のとおりとなります。
 
 
① 申込書、付属書類の作成
 
 申込書、事業計画書及び企業概要書(個人の経歴書)を作成します。事業計画書の内容及び計画の裏付けとなる売上予測、損益計算及び資金繰りに関する書類の作成が重要となります。
 できるだけ正確かつ詳細な計画書を作成したいところですが、あまり時間をかけすぎても融資が遅れてしまいますので、要点を掴んで手早く作成する必要もあります。
 また、通帳の写しの提出もありますので、前回お話ししたとおり事前に通帳を「作成」しておけば、大きなアドバンテージとなるでしょう。
 
② 融資の申し込み
 
 事業地の管轄支店に融資を申し込みます。郵送や日本政策金融公庫のサイト等でも受付を行っていますが、可能な限り持参した方がいいでしょう。
 公庫側に開業の意志をしっかり伝えること、担当者に挨拶することができれば理想的です。
 
③ 面接及び現場の実査
 
 管轄の支店で担当者との面接を行います。支店にもよりますが、申し込みをしてから数日で面接の連絡が来ます。事業計画や資料の内容を淀みなく説明できることももちろん大事ですが、事業に対する熱意をアピールすること、その事業に掛けていることを担当者に伝えることが重要です。
 面接の前後で、公庫の担当者による現場の実査が行われます。事業主立ち合いの場合もあれば、いつの間にか実査が済んでいる場合もあります。
 
④ 結果の通知及び契約
 
 面接の終了後、早ければ一週間、通常は大凡三週間程度で結果が通知され、融資が決定した場合は契約手続きとなります。契約の段階までくれば後は判を押すだけなので、あまり固くならなくても大丈夫でしょう。手続きに問題がなければ、大体融資実行まで一か月以内に終わると思います。
 
 
 やはり融資実行のためには、具体的な事業計画書と裏付け資料の提出、そして何よりも担当者にいかに熱意をアピールできるかが重要となります。実際に事業開始してから始めるのではなく、事業開始の青写真の段階から調査や計画を進めておけば、融資だけでなく事業そのものもうまくいくことでしょう。何事も前倒しに進めていくことが大切です。

2.実際に融資を受けるタイミング

 新創業融資制度を活用する場合、新たに事業を始めるか、または事業開始後税務申告を2期終えていないこと」と言う条件があります。
 
 「なんだ、意外と期間のレンジは広いじゃないか」と思われるかもしれませんが、開業時に起こりがちなリスクを避けるためには、実際はもっと期間を限定する必要があります。
 
 例えば飲食店のような事業所の立地がその後を大きく左右するような業種の場合は、何よりも好条件の物件を抑えておくことが重要です。
 もちろん店舗の立地すら決まっていない段階では融資はおりませんし、逆に優良な物件を見つけ融資を申込む前に手付金等を支払ってしまった場合、もし審査が通らなかったとすると資金不足によって開業できず、手付金等がそのまま損失になってしまうケースもよくあります。
 また、「ものは試しに数か月やってみて、足りなくなったらお金を借りよう」も通用しません。その数か月間で「客足が伸びない」と言う負の実績が作られてしまってからでは遅いのです。
 そう言ったリスクを避けるためにも、今回の例の飲食店の場合は賃貸借の内諾を受け手付金等を支払う前のタイミングで融資の審査を受けることが理想と言えます。
 
 逆に融資の効果を最大限に活用するために、融資を先延ばしする場合もあるでしょう。
 
 例えば個人と会社では同じ創業融資でも受けられる額と信用が違いますので、新創業融資制度が受けられる期間内に会社を設立する予定がある場合は、会社を設立したタイミングで融資を受けることも考えられます。会社を設立してすぐの申し込みであれば「事業が好調であり業務拡張するため」と言う大義名分もできますし、「会社としてやっていく覚悟」も伝えることができます。
 
 

3.まとめ

 事業運営には様々な適時があるように、融資の申し込みにも最適なタイミングと言うものがあります。
 上の例では飲食店を挙げましたが、コンピュータ関連や製作業等、それぞれの業種に資金調達の最適な時期が存在します。融資までの流れと最適なタイミングを把握し、効果の享受とリスクヘッジを心がけていくことが重要となります。
 
 さて、次回は融資実行のための本丸、創業資金の調達方法(3)―事業計画書の作成― についてお話していこうと思います。