創業資金の調達方法(4)―金融機関との融資面談―

 このエントリーは創業資金の調達方法(3)―事業計画書の作成― の続きとなります。
 
 前回のエントリーでは事業計画書についてお話ししました。
 今回は金融機関との面接・面談についてお話ししたいと思います。日本政策金融公庫の新創業融資については今回がいったん最終章となります。
 
 

1.日本政策金融公庫との面談とは?

 
 事業計画書を含めた融資申込み書類の提出の後、数日内に融資担当者と1対、もしくは2対2程度の少人数で一発勝負の面談が行われます。
 
 申込者が事業計画書に記載されているとおりの人物であるか、また、本当に融資するに足りる人物であるかどうか、実際に担当者が面談してチェックするわけです。
 
 一応、我々行政書士や税理士と言った士業も同席することが認められるケースは多いですが、基本的には本人が出席しない代理面談は認めらません。
 法的に強力な代理能力を持つ弁護士であっても、本人に代わって面談することは難しいです。
 お金を借りるのも返すのも本人ですから、信頼関係と言う意味でも本人が出席しない意味はないでしょう。
 
 我々士業が同席すると言っても資料の数字や根拠に対して軽く助言をする程度です。
 事業に対する熱意や自身の強み、実際にどのように数値を試算したか等については経営者本人の口から語る方が効果的ですし、可能な限り答えられるようにしておく必要があります。
 
 服装等について決まりはないですが、男女ともにスーツをお勧めしています。
 「どうしても仕事のスケジュールがタイトなので作業着で…」と言う場合は仕方がないですし仕事があると言うアピールになる場合もありますが、それ以外の服装、例えばラフな服装や普段着で行く理由はないですしやる気を疑われてしまいます。
 
 また、あわせて面談に持参すべきものを忘れないようにしましょう。
 
 不足資料があっても後日追完の形で大丈夫な場合が多いですが、融資までの時間が空いてしまいますし担当者の心証を害する恐れもあります。
 
 面談に持参すべきものについては日本政策金融公庫に融資借入申込書を提出後に送付される「お持ち頂く資料」を参考にしましょう。
 

2.面談の内容はどんな感じ?

 
 融資面談で大切なことは、「自身のストーリー」と「誠実さ」です。
 
 数字や根拠、事業や業界の概況と言ったものはできるだけ事業計画書に盛り込み、担当者との面談では自分自身がどのような経験を積んできてこれからどのように歩んでいきたいか、書類に記載されている数字はしっかりと調査して根拠があることをアピールしていきましょう。
 そのためにも、事前準備や事業計画書を作りこむことが大切となります。
 
 面談の場においては事業計画書の内容通りに受け答えをし、質問されたことを的確に答えましょう。
 
 自分のアピールの場ではありますが、聞かれていないことを身を乗り出して答える必要もありません。脱線したり余計なことを話していると心証は悪くなりますし、貴重な時間が無駄となってしまいます。
 
 付け加えれば、融資担当者は敵ではなく、味方になってくれる人です。経営者と本部の融資部とを橋渡しをして、できるだけ円滑に融資が実行されるように努めてくれます。
 彼らも融資に成功すればそれが実績となりますし、また、優良な返済者であれば次の融資も斡旋しやすくなりますので、しっかりした返済が見込まれるようであれば積極的に貸し付けをしてくれます。
 
融資担当者に対して弱気になったり喧嘩腰になったりするようなことなく、フラットかつ誠実に、取引相手として接するようにすることがベストと言えるでしょう。
 

3.実際によく聞かれる質問は?

 
 面談の場は基本的には事業計画書に記載されている内容の確認や経営者としての資質や自覚の調査ですが、いくつかお決まりの質問があります。
 
 一例として下記に挙げておきますので、最低限は答えられるようにしておくといいと思います。
 
 
① 経営者本人の技術、経歴等の質問
 
  ⅰ.これまで何をしてきたか、どのような経歴か
  ⅱ.前職でやっていた業務は何か、具体的に説明できるか
  ⅲ.どのような結果を残してきたか
 
 
② 経営者としての自覚があるかどうかの質問
 
  ⅰ.自己資金はどのように貯めたか
  ⅱ.経営者に必要なものはどのようなことだと思っているか
  ⅲ.開業に向けてどのような準備をしてきたか
 
 
③ 事業に対する熱意についての質問
 
  ⅰ.なぜ事業を始めようと思ったか
  ⅱ.業界に対してどのような思いがあるか、また、問題点は何か
  ⅲ.なぜ今事業を始めるのか
 
 
④ 自社の製品・サービスについての質問
 
  ⅰ.自社製品・サービスにどのような強みがあるか
  ⅱ.ライバルとどのような差別化を図れているか
  ⅲ.ターゲットとする客層は誰か
 
 
⑤ 将来の展望や想定外の事態への対処
 
  ⅰ.5年後に思い描いている将来はどのようなものか
  ⅱ.計画通りに売上げが達成できなかった場合はどうするか
  ⅲ.キャッシュフローがうまくいかなかった場合の対処手段はあるか
 
 
 
 また、こちらから言ってはならない質問、回答もいくつかあります。
 
 
① いくらなら借りられますか?
 
 借入は何にいくら使うかを明確にして借入希望額を伝えるものです。「貸してくれるなら何でもいい」「余計に貸してくれるならもっと貸して」と言う類の台詞は確実に担当者の心証を害します。
 面談の場は基本的にアピールの場であって、交渉の場ではないですし「この額が必要です」と言うことをしっかりと明示する必要があります。
 
 
② その点については検討していませんでしたが、たぶん大丈夫なように思います。
 
 融資担当者は曖昧で根拠のない点を嫌います。
 質問されたことへの回答を用意していない場合は勿論ありますが、「たぶん大丈夫」等の曖昧で根拠のない回答はやめておきましょう。
 せめて「その点については失念しておりました。しっかりと検討し必要であれば後日書類を追完いたします」等、後になってもいいので根拠を示せるようにしましょう。
 
 
③ 融資金の使途については○○として申し込みましたが、別の用途も考えてます。
 
 これは恐らく最も金融機関が貸したくないと思わせる言葉ではないでしょうか。
 
基本的に金融機関は”提示された目的”に対して融資をします。融資金が目的以外に使われることは約束違反であり、背信にもつながります。
 例えば”既存事業の設備投資”として融資を申し込んだのに”新規事業”に対して融資金を投資していた事が発覚した場合は融資は直ちに引き上げられるでしょうし、今後同じ金融機関で融資を受けることができなくなるかもしれません。
 
 融資金を明示した使途以外の別の用途に使うことも、面談の場でいきなり口頭で宣言することもやめておいてください。
 

4.まとめ

 
 融資担当者との面談は総仕上げの場ではありますが、多少ミスをしてもしっかりした事業計画書を元に熱意をアピールできれば案外押し通せる場でもあります。
 
 基本的には金融機関、特に日本政策金融公庫はお金を貸したい立場でもありますから、一発勝負である事をあまり気負いせず、事業の長所と自分の熱意を売り込む事ができれば融資はちゃんとおりるでしょう。
 やはり融資の申込みに肝は事業計画書となりますので、自分で調べてきちんと作成することはもちろんのこと、専門家の手を借りることも一つの手ではないかと思います。
 
 東京行政書士会の会員であれば、日本政策金融公庫宛に紹介状を発行することができます。これは書類を軽減したり融資を確約したりするものではありませんが、融資実行までの流れを円滑にし、期間の短縮が見込める可能性も高くなります。
 
 もちろん当事務所でもお客様の融資をサポートした上で紹介状を発行いたしますので、まずは相談からでも、お気軽にお申し付けください。
 
 さて、次回は創業資金の調達方法(5)―新創業融資制度以外の資金調達方法―についてお話ししていきたいと思います。