創業資金の調達方法(3)―事業計画書の作成―

 このエントリーは創業資金の調達方法(2)ー融資までの流れとタイミングーの続きです。

 前回のエントリーでは新創業融資制度の融資実行までの流れとタイミングをお話しました。今回は創業融資の実行のための要所である、事業計画書についてお話しします。

 

1.事業計画書とはなんぞや?

 
 事業計画書は事業の目標や計画、現状を客観的に判断するための重要な書類です。
 
 よく事業計画書は地図に喩えられますが、事業計画書を作成することで事業の立ち位置や目標の分析、自分や会社に何が不足していて何が足りているかを知ることができる、自分だけの宝の地図となります。
 なにより事業計画書を作成することは、事業に対する自分のモチベーションアップにもつながります。
 
融資申込以外でも非常に役に立つものですので、直近で融資を申し込む予定がなくても、是非作成しておくことをお勧めいたします。

2.金融機関と事業計画書

 
 先にも述べたように、事業計画書は事業の目標や計画、現状を客観的に判断するための資料です。
 
 金融機関も提出された事業計画書を徹底して分析します。
 作成するにあたっては経営者の人柄や事業や現状に対する分析能力、数字の客観性や業界の展望は特に重要視されますので、経営者自身がよく知り的確にアウトプットする必要があります。
 相手は融資のプロであり何件も事業計画書を見てきていますので、数字のごまかしや嘘はすぐ見抜きます。嘘をつく経営者はどこに行っても信用されませんので、誠実かつ正確に記載するようにしましょう。
 
 さて、日本政策金融公庫の新創業融資制度でももちろん事業計画書は必須の書類であり、サイトにも事業計画書に添付するべき書類の例示や創業計画書の雛型や記入例が置いてあります。
 
※参考資料として、日本政策金融公庫国民生活事業部の該当ページリンクを貼っておきます。
 
 ただし、「創業計画書の記入例」については、残念ながら日本政策金融公庫の融資担当者すら「この計画書で出されても融資はおりないでしょうね」と言うくらい簡略かつ不完全なものです。
 
 特に「創業の動機」や「経営者の略歴」については、事業の対する熱意や知識、技術をアピールする重要な項目です。
 
 創業計画書の小さい欄に簡略に記載するのではなく、”別紙参照”等するなどして少なくともA4用紙1枚以上の分量を記載したいところであり、陳腐な表現ですが「自分の言葉で書く」と言うことが大切です。
 

3.実際に事業計画書に盛り込む内容

 
 事業計画書に記載する内容は下記①~③の3本を柱とし、その柱を構成する要素が何点かあります。
 
 
① 事業内容及び経営者自身の紹介
 
  ⅰ.経営者のプロフィール
  ⅱ.経営ビジョン・理念・目的
  ⅲ.ビジョン実現のためのビジネスモデル
 
 
② 商品、市場環境及び業界全体の展望
 
  ⅳ.自社のサービス及び商品の強み・特徴
  ⅴ.業界の状況及び至近の競合相手
  ⅵ.販売戦略及びマーケティング
  ⅶ.生産方法及び仕入れ先
 
 
③ 事業にかかる具体的な数値
 
  ⅷ.売上・人件費予想
  ⅸ.損益計算予想
  ⅹ.開業資金
 
 
 
① 事業内容及び経営者自身の紹介については、自己を客観的に見つめた上で、どのような技術を持っていてそれを他者に説明できるか、そして事業にかける熱意をアピールできるかがポイントとなります。
 ②、③よりは具体性や客観性は求められませんが、やはり嘘はいけません。
 シェフをやったこともないのに「料理で金をとってた」なんて言ってもすぐに見破られます。
 自己の経験を下書きにして多少話を盛る程度にしておいた方が無難だと思います。
 
 
② 商品、市場環境及び業界全体の展望については、自社の商品やアピールポイントを把握できているか、業界を俯瞰しきちんと調査しているかどうかを見られます。
 相手は同じ業界の事業計画書を何通も見てきている猛者ですので、事前にしっかりと業界を調査し準備をしていきましょう。
 
 
③ 事業にかかる具体的な数値については、ずばり、「しっかりと稼いでいけるか」この一点に尽きます。
 そのためには例えば飲食店であればメニューの価格や近隣店舗の客数調査、店前交通量の調査等をしっかり行い、数字の信頼度を上げることが大切となります。
 楽観的な予想は極力排して、数字一つ一つに根拠を求め精度の高い予測を打ち立てることが、融資成功のみならず事業成功の鍵にもなります。

4.まとめ

 
 事業計画書は具体性・信頼性・客観性が大事になります。
 
 もちろん記載する内容の取捨選択は構いませんし必要なことですが、「マイナス点は見なかったことにして調査すらしない」では面談の時にその点を突っ込まれた際に返答できませんし、事業を進めていく上で足許を掬われる可能性も高くなります。
 
 楽観も悲観もせず、「具体的」に「信頼のある数値や事実」を「客観的」にアウトプットして、事業に必要な融資を最大限に掴み取っていきましょう。
 
 次回は創業資金の調達方法(4)―金融機関との融資面談―のお話をしていきたいと思います。