トレーディングカードショップの始め方(1)ー開業の基礎知識ー

 トレーディングカードショップのスタートは飲食店や建設業と比べればかなり容易です。
 商品在庫も場所を取りませんし人的資源も事業主一人で始められます。副業から始めるにはもってこいでしょう。
 
 そんなわけで、今回からはトレーディングカードショップの始め方や実際の事業についてお話ししたいと思います。
 
 
 基礎的な話ではなく実店舗を開くのでそのことについて知りたい!と言う方はー(4)実店舗の始め方ーをご参考ください。

 

 

1.トレーディングカードの特性

 
 トレーディングカードは次のような商品のメリットデメリットを持っています。
 商品のメリット
① 在庫がそれほどかさばらない。
 
 小さな紙が商品ですので、量にもよりますが在庫を保管する場所にはそれほど困りません。
 ただし、新品のボックスやサプライを仕入れて販売する場合はそれなりの倉庫規模が必要となります。
 
 
② 古物商の許可取得が容易。
 
 警察署にもよりますが、「道具類」は個人が申請しても書類に不備がない限りは大体の場合で許可が貰えます。
 逆に、例えば自動車等については法人でなければ許可を渋る警察署もありますし、扱う商品によっては申請者の経歴を問うてくるものもあります。
 
 
③ 副業から始めやすい。
 
  インターネットモールやオークションを利用すれば実店舗を持たずとも営業可能です。
  場所を借りる必要がないと言うのは大きなメリットとなります。
 
 商品のデメリット
① 深い商品知識が必要
 
 はっきり言えば、扱う商品は金券のようなものです。そして株のごとく、日々相場が変動しています。
  しっかりした商品知識がなければカモにされてしまうこと請け合いでしょう。
 
 
② 偽造品が多い
 
 特に高額なものやメジャーな商品は常に偽造との戦いになります。
 カードに関する知識だけでなく、現物そのものに対する知識も必要となります。
 
 
③ 業界の展望が一企業の業績に左右されやすい
 
 カードを製作しているところは公共団体や国ではなく一企業です。当然のことながら業界の動きもメーカー企業の業績や発表に左右されます。
 行く末が保障されていない業界とも言えますので、業界の動きには注意が必要です。
 
 

2.トレーディングカードショップ開店前の準備

 事業開始の前にやることはだいたい決まっています。つまるところ「資金」「場所」「計画」です。
 更にそれらを補完するための「通帳の作成」や勉強会・セミナー参加やショップ店員のアルバイトと言った「業界経験」、店にいい商品を流してもらうための取引先や顧客候補との「コネクション作り」もあるでしょう。
 
 今回はそれらのうち「資金」「場所」「計画」についてお話ししていきたいと思います。
 
 「通帳の作成」「業界経験」等については、次回「トレーディングカードショップの始め方(2)ー開業に必要なことー」をご参考ください。
 
 
(1)開業に必要な資金はどれくらい?
 一般的な飲食店やその他小売店の開業の為に必要な資金は最低でも500万円、通常は1000万円+創業融資はかかることになるでしょう。
 実店舗でトレーディングカードショップを開業する場合もそのくらいはかかります。
 
 しかし現実問題、資金を1000万円集めるの大変ですし、それで事業がうまくいくのかどうかと言う不安も大きいです。
 と言うことで、まずは足掛かりとしてインターネットモールやフリーマーケットから始める方がいいのではないでしょうか。
 
 そうなると初期投資費用は大きく減らすことができ、自己資金100万円未満で開業することができます。
 内訳としてはネット広告含めたインターネットモールの費用1万円~30万円、商品保管のための費用0円~10万円、配送用の梱包資材・その他必要経費含めて10万円前後と言ったところでしょうか。
 商品在庫費用含めても50万円行くか行かないかで開業できます。
 
 
 参考までに、実店舗で開業する場合は下記の費用がかかります。
 
(1)実店舗の費用 賃料15万円の店舗の場合初月・次月家賃30万円+保証料6か月分+不動産会社仲介手数料+消費税等で賃料の10倍の150万円
 
(2)店舗物件改装費として100万円から300万円
 
(3)店舗什器等購入費・レンタル費用として200万円
 
(4)スタッフ人件費3か月から半年分として200万円から500万円
 
(5)その他消費事務用品・事業用ソフトウェア・水道光熱費のランニングコスト3か月分から半年分として50万円から100万円
 
 合計で700万円から1000万円はかかります。いずれ実店舗開業をする場合の参考にしてみてください。
 
 
(2)販売場所はどこにする?
 インターネットモールから始めるならショップの登録、実店舗から始めるなら店舗を借りることが必要となります。
 
 資金面からみてもインターネットモールから始めた方がいいと思いますので、例えば楽天市場やAmazonと言ったところから登録して始めることになるのではないでしょうか。
 
 実店舗を借りる場合、カードショップは飲食店程とは言わないまでも、立地が大事になります。できるだけ大型駅の駅近を抑えたいところです。
 
 飲食店や美容室、服飾店とは違いビルの下層階を抑えなければいけないわけではないので、その辺りは楽とも言えます。
 
 勿論のことながら飲食店と違い「住宅街の隠れ家的店舗」では一切お客さんは来ません。(以前は住宅街の中にホビーショップがあったりもしましたが、ほとんどは潰れてしまいました。)実店舗の場合は自宅開業が不可能な業種と言えます。
 
 
(3)開業のための計画って?

 開業のための計画書として「事業計画書」「収支試算計画書」が挙げられます。これらは創業融資を受ける際に必要となる書類ですが、融資を受ける予定がなくても事業計画書は必要です。
 事業計画書は事業の目標や計画、現状を客観的に判断するための重要な書類です。よく事業計画書は地図に喩えられますが、事業計画書を作成することで事業の立ち位置や目標の分析、自分や会社に何が不足していて何が足りているかを知ることができる、自分だけの宝の地図となります。なにより事業計画書を作成することは、事業に対する自分のモチベーションアップにもつながります。
 詳しくは以前のエントリーにまとめているので参考にしてください。

3.実際に稼いでいくには?

 開業するための下準備が整ったら、次は実際に開業に向けた商品補充や許可が必要になります。
 ひとつひとつ見ていきたいと思います。
 
 
(1)商品の仕入れについて
 まずは売り物がなければなりません。
 
 トレーディングカードショップはBtoB(business to business)及びCtoB(Consumer to business)で仕入れをして、BtoC(business to Consumer)に販売することで成り立っています。
 つまり、他のカードショップや消費者から安めにカードを仕入れて、利益及びコスト分を上乗せて消費者に売る方法です。
 基本的にBtoBで仕入れる場合は、現在は安いが値上がりしそうなものを買い値上がりしてから売る方法が一般的であり、株取引に似た性質を持ちます。
 (MtGで例えれば、スタン落ち間近の下環境でも使われそうな強カードを大手店舗で安く仕入れて少し寝かせた後、希少価値が高まってきたころに放出するやり方でしょうか。)
 
 BtoCについては顧客が納得する値段で仕入れてそれよりも高く売る一般的な手法です。
 
 注意するべきは高額商品の取引です。
 
 トレーディングカードは偽造が横行する業界なので、各商品に対する商品知識が必要となります。
 基本的に一枚数万円もするような高額商品はまず個人のショップに流れてくる可能性は低いので、ピンポイントで「売ります」と言ってきた場合は、注意して現物を鑑定しなければなりません。
 
 
(2)必要な許認可について
 どんなに小さくても事業ではありますので、税務署に開業届は出しておいた方がいいでしょう。
 出さなくてもいいと言えばいいのですが(本当はあんまりよくないです)、出しておいた方が法的な不具合が少ないですし、青色申告も同時に届け出ていれば税制面で有利になります。
 
 もうひとつ、商品の特性上間違いなく「古物」を扱う分野になりますので管轄の警察署に「古物商許可」を出しておく必要があります。
 
 先にも述べたとおり、基本的にトレーディングカードに関する古物商の許可は余程場所や要件がそぐわないか、本人に欠格事由(例えば過去に犯罪歴がある等)がない限りは大体の場合許可が貰えます。
 申請書類についても、我々行政書士の感覚から言えばそれほど難度の高いものではありません。
 
 ただし、管轄が警察署であるため地域毎のブレが大きく、例えば田舎の警察署の場合「トレーディングカードとかよく分からん、いかがわしいものなのかもしれん」みたいな感じに思われ、何度か質問される場合や警察署に出向かなければならない可能性はあります。
 
 また申請から許可までの標準処理期間が50日と結構長めです。二か月待たされるのは流石に長いなと感じるでしょう。
 不親切な警察署の場合、書類が一枚足りないだけで「書類足りないんで受け付けません。行政書士とかにちゃんと頼んで」等言われてしまう場合もあります。
 
 警察署も怖いところではないのですが、当たり外れが結構ありますので最初から行政書士に任せてしまうのも手かもしれません。
 
 
 取得しておくべき許可や資格はそれくらいです。おもちゃ鑑定士のような民間資格は特に必要ありません。
 各TCGのジャッジ資格も必要ないですが、実店舗であれば取っておいて損はないのではないかとも思います。
 
 
(3)融資を受けるべきか?
 基本的に現金があればどんな状況でも安心ですので、受けられるなら受けた方がいいと思います。
 
 しかし商売の性質上、額の融資を受けるのは難しいですし、副業でインターネットモールからスタートの場合はそもそも門前払いを食らう可能性の方が高いかもしれません。
 
 「個人がトレーディングカードショップを開業したい」と言っても、銀行はおろか政策金融公庫ですら中々融資したがらないのが現在の状況です。
 
 あまり設備費もかからない事業ですので、融資を受けようとする場合はしっかりと事業計画書の作成や資金の使い道を策定したうえで、自己資金額よりも低い融資額を設定した方がいいでしょう。

4.まとめ

 
 トレーディングカードショップはインターネットモールならそれほど手間もかからず気軽に始められます。
 副業にはもってこいですが、商品に対する勉強はかなり要求されるので地道な努力が必要となります。
 
 「やってみようと思うけどなんか難しいな」「できるだけ失敗はしたくないな」と感じたなら、当事務所に相談からでもお気軽にお問い合わせください。
 
 
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