始めよう、運送業

 今(というよりも、いつの時代もですが)人手が足りないのは物流を担う仕事です。
 特に昨今の情勢で、運送の仕事は増え続けています。
 
 しかし、現実に運送業を始めるとなると、たとえトラックを手に入れたとしても、そうそう簡単に始められない事情があります。
 
 まず運送業を始めるには、「一般貨物自動車運送事業」(あるいは「特定貨物自動車運送事業」)の許可を取らなければなりません。
 しかしこの「一般貨物自動車運送事業」、資本金や所有トラックの台数、事業所や人的要件がかなり高めに設定されており、とても手軽に始められるものではありません。
 
 実態を見るとトラックの親方はほとんどが自営業者なのですが、そのほとんどは一人親方であり「一般貨物自動車運送事業」を取っているわけではありません。
 ここはまあちょっとしたからくりがあって、例えば「大手運送会社の契約社員と言う形で所属して、トラック持ち込みと言う形で仕事を請け負っている」と言ったような形式を取っている人も中にはいます。
 
 しかしまあ、そんなことを言っても実際に物流の仕事を始めたい人はいるわけですし、先のような方法も「それじゃあどこかに所属してるのと変わらない!一国一城の主がいい!」とか「そもそも都心住みだしトラックなんて置ける駐車場がない……。乗用車でなんとか物流の仕事は始められないの!?」と言う意見も出ると思います。
 
 現実問題として、個人では物流の仕事は始められないのか?
 実際はそんなことはなく、個人でも運送業をスタートできる方法はいくつかあります。
 今回のエントリーではそんな話をしていきたいと思います。

1.運送業の許可はハードルが高い!

 普通乗用車以上の自動車で運送業を始めるには、一般貨物自動車運送事業の許可を取らなければなりません。
 
 そして一般貨物自動車運送事業は要件が非常に厳しいものとなっております。
 
 事業開始に必要な最低資金がおよそ2000万円から3000万円と高く、トラック5台以上の所持が必要です。
 更には設備が整った事業所と駐車場に広い敷地が必要と、個人事業で始めるには無理があります。
 
 ところで、貨物運送業をつかさどる「貨物自動車運送事業法」の第2条2項は、次のように定められています。
 
 「この法律において一般貨物自動車運送事業とは、他人の需要に応じ、有償で、自動車(三輪以上の軽自動車及び二輪の自動車を除く。次項及び第七項において同じ。)を使用して貨物を運送する事業であって、特定貨物自動車運送事業以外のものをいう。」
 
 ここで重要なのが自動車(三輪以上の軽自動車及び二輪の自動車を除く。)の部分です。
 
 つまり、軽自動車やオートバイ「一般貨物自動車運送事業」の外の話であり、一般貨物自動車運送事業の許可を受けなくても事業が始められると言うことになっています。

2.手軽に運送業を始めるなら軽自動車かオートバイ!

 では、軽自動車やオートバイなら何の許可を受ける必要がなく、運送業を始められるかと言えばそう言う訳にもいきません。
 今度は「貨物軽自動車運送事業」の届出が必要になってきます。
 
 しかしこの貨物軽自動車運送事業、一般貨物自動車運送事業の許可取得に比べて格段にハードルが低いです。
 一般貨物自動車運送事業の許可がしっかり装備を整えて日本アルプスとか冬山に挑むものだとしたら、貨物軽自動車運送事業届出の要件はちょっとした装備で夏山に日帰りで行くようなものです。
 
 まず、軽自動車、もしくはオートバイと駐車場があれば届出が受理されます。
 そして事業所は自宅でOKです。一般貨物自動車運送事業のように設備や事業所要件を整える必要はありません。
 一般貨物自動車運送事業の許可と比べると格段に開業しやすくなっています。
 
 何より審査期間が短いのも特徴で、我々行政書士であれば早ければ即日どんなにかかっても一週間以内には開業することができます。
 小さな元手から運送業を始めるならまずは軽自動車かオートバイから!と言うことですね。

3.軽自動車もオートバイも持ってないです。自転車で始めたいんですけど大丈夫ですか?

 自転車及び125cc以下のバイク(原付)は、一般貨物自動車運送事業の許可はもとより貨物軽自動車運送事業の届出すら出せません。と言うよりも、「貨物軽自動車運送事業」すら必要がありません。
 
 なので白ナンバーの原付で開業届以外の何の届出も出さずに運送業を始めても法的には全く問題ありませんし、自転車についても同様です。
 
 街中を走るUberEatsは自営業者による運送業ですが、自転車や原付であれば特に届け出なく配達しています。ロジクエスト(旧バイQ)の配達網やエコ配も同様です。

4.まとめ

 運送業をスタートさせるには、
 
① 2t以上のトラックを手に入れてどこか運送会社に形だけでも所属しながらスタートする。
② ワゴンタイプの軽自動車かバイクを手に入れて、貨物軽自動車運送事業の届出を出して営業を開始する。
③ 自転車や原付で開業届だけで始める。
 
 の3パターンが王道だと思います。
 
 正直、「一般貨物自動車運送事業許可」と「貨物軽自動車運送事業届出」の間の開きが大きすぎて、その中間はどうにかならなかったのかい!と思ってしまいますが、行政的にももうどうにもならないのだと思います。
 
 スズキのワゴンRは運送業が始められるのに、TOYOTAのハイエース1台持ってるだけでは運送業始められないんですよ、不思議なことに。
 
 駐車場が用意できるならワゴンタイプの軽自動車や軽トラを貨物にして、そこからスタートするのがコストパフォーマンスよく始められるのではないかと思います。
 
 貨物軽自動車運送事業の届出自体の要件自体は簡単ですが書類に手間取る可能性もあり、また、陸運局及び軽自動車検査協会に足を運ばなければなりません。
 
 その手間を考えたら行政書士に依頼するのもいいのではないかと思っておりますので、ご入用の際は当事務所であったり、もしくはお近くの行政書士をぜひお尋ね頂ければ幸いです。