歌舞伎座前の老舗弁当店の廃業に思うこと

 創業152年の歌舞伎座前の老舗弁当店が昨日廃業となりました。
 
 もちろん一番の理由は新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けての廃業でありまして、歌舞伎座での公演が中止となり、採算が見通せなくなったためとの事です。
 
 ただ、それ以前から建物の老朽化と後継者の不在で、事業の譲渡先を探していた矢先と言う事情もあったそうです。
 特に後継者不足と言うのは深刻な問題で、少子化も相まって後継者不在で廃業するところも増えてきています。
 
 
 古くからやっている小規模事業主は自分の事業を家族のようにとらえているケースが多く、たとえ長く勤めている古株の従業員であっても社長の座を明け渡すことはあまり多くはありません。
 また、親類が専務や副社長をやっている場合でも、「No.2としてやるのはいいけど社長になるのはいやだ」と言う場合も結構あります。
 
 どうしても我が子に会社を継がせたいのに肝心の我が子は既に別職で生計を立てており、今の生活を捨てて会社を継ぐこともなく自分の代で廃業……と言うケースも多々あります。
 子に継がせられないくらいならと自分の代で潰す判断をするらしく、黒字倒産もかなりの数があるそうです。
 
 何代か続いている老舗の事業や、若い頃に創業した会社は「スタートアップをしてある程度軌道に乗ったところでイグジット」……と言う訳にはいかないので、当然の選択と言えば当然の選択かもしれません。
 
 今回の老舗弁当店のケースについては事業の譲渡先も探していますし、大本の事業自体が直近の赤字で採算が見通せなくなった上での廃業ですのでそう言ったケースに当てはまるわけではないですが、後継者の不在と言うのはやはりウエイトが大きかったのではないかと思います。
 
 
 何にせよ、今回のことを契機に老夫婦で切り盛りしていたような小さな飲食店や店舗の結構な数が、廃業してしまうのではないでしょうか。
 行政や金融でも多種多様の補助や助成金、融資を用意していますが、「もうそろそろ潮時だし……」でやめてしまうようなところも少なくないと思います。
 
 できれば「やりたいことはやりきった」と言う完全燃焼で終わって欲しい気持ちもありますが、今から補助金を得て融資をお願いして店を続けて……と言う気力も体力も持たないかもしれません。せめて、納得のいく形で終わらせて欲しいと願っています。
 
 
 苦境に立たされているのは長く続けていたところだけではなく、我々を含めた大半の事業に覆いかぶさってきています。
 特にここ数か月で開業していきなりこの騒動に巻き込まれた新規の店舗については、試練があまりにも大きい、大きすぎます。
 私が開業を請け負ったところもありますので、尚更そのように感じられる毎日です。
 
 
 「銀行の支払いは待ってはくれない」と言うことはありません。資金繰りに窮したら、まずは融資をお願いしている銀行に連絡をしてください。
 他にもセーフティネット4号及び5号や、政策金融公庫で無利子無担保で融資をしてくれる制度もあります。
 
 家賃や賃料の支払いも厳しいですが、現在国会で、賃料補助に関する法案について審議中です。
 他にも東京都では、テイクアウトやデリバリーを始める飲食店の初期費用を助成をする方針を固めています。
 
 
 私もできる限り行政の補助やその他融資等について調べてお力になりたいと思っていますので、まずはこの苦境を乗り切りって欲しいです。
 生き延びましょう、お互いに。