キッチンカーと仕込み場所

 キッチンカーは楽しい上に夢とロマンがあります。
 
 また、収益性で言えば通常の飲食店よりパイは小さいですがゴーストレストランよりは儲けは大きくなります。
 開業コスト的に言っても、通常の飲食店開業と比べてコストが抑えられる方法はいくつもあります。(キッチンカーを用意しなければならないので通常の飲食店と比べて開業コストが嵩んでしまう可能性もあるにはありますが……)
 
 ただし、基本的にキッチンカーは車だけあれば開業できると言うものではありません。車を置くための駐車場の他に固定された「仕込み場所」が必要となってきます。
 
 フードトラック業開業の段階で一番躓くと思われるのが「仕込み場所」。キッチンカー単体では保健所の考える厨房の要件を満たせるケースは非常に少なく、原則的には固定の仕込み場所を要求してきます。
 
 許可要件を満たしたガッチガチのキッチンカーと比較的緩めの基準を持つ保健所が合わさればキッチンカーだけで完結できる可能性もありますが、コスト的に考えてもあまり現実的ではありません。
 
 今回のエントリーではそんなキッチンカーの仕込み場所の話をしていきたいと思います。
 
 

1.仕込み場所の要件は?

 結論から言えば、多くの保健所ではキッチンカーの仕込み場所は通常の飲食店厨房と同じ要件が求められています。
 
 即ち独立したキッチン、業務用の二槽シンク、衛生及び防火加工が施された天井及び壁等々。
 これらは各家庭のキッチンではほぼ要件を満たせないので、「自宅のキッチンが仕込み場所」とするのは事実上不可能となります。
 
 「安上がりで済みそうだから」と言う理由でキッチンカーでの開業を考えている場合は、通常の飲食店を開いた方がいいケースも出てくるでしょう。
 
 基本的にキッチンカーはすでに厨房を持っている既存飲食店が販路を広げる際に有利となるものです。
 そう考えると飲食店のスタートアップをキッチンカーとするよりは、ゴーストレストランや通常の飲食店から始めた方がいいのかもしれません。

2.仕込み場所の探し方

 仕込み場所の候補はいくつかありますので、その方法を紹介していきます。
 
(1)自宅を改装して仕込み場所となる厨房を作る方法
 自宅の一室を厨房に改装して営業する方法です。
 都市部ではあまり向きませんが地方であればこの方法も視野に入ってくると思います。
 
 建前上、家庭用キッチンと業務用キッチンはわけなければいけないので、保健所にもよりますが業務用キッチンと家庭用キッチンを兼用する予定の場合は許可が貰えない可能性もあります。
 実際に自宅を改装する前に、事前に保健所や行政書士に相談してください。
 
(2)厨房となる事業所を借りる方法
 キッチンカーで営業する場合は、通常の飲食店開業の場合と比べて立地要件のハードルは低く、事業所を安く借りられることが多いです。
 
 ただしそこはもちろん飲食業。「内装から」ともなるとやはりそれなりに費用は掛かりますし、自動車の駐車料金等も馬鹿になりません。都市部の場合はキッチンカーに対する拘りが無いのであればゴーストレストランの方がいいのではないでしょうか。
 
 もちろんゴーストレストランはUberEats等のフードデリバリー事業者の販路圏内でなければならないので、地方であればキッチンカーも選択肢に入ってきます。
 
(3)飲食店の厨房を間借りする方法
 親戚知人が飲食店を既に経営しておりあなたのことを応援してくれているのだとしたら儲けものです、その厨房を仕込み場所として間借りしてしまいましょう
 基本的に一度許可が出た厨房は次の許可も通りやすく、保健所にもよりますが(しっかりと書面で説明すれば)最近はシェアキッチンに対しても寛容になってきています。
 
 キッチンカーでスタートアップするには個人的にはこの方法が一番理想的だと思っています。
 
(4)月額制のシェアキッチンを借りる方法
 ゴーストレストランの隆盛に伴いシェアキッチンの数は増えてきており、シェアキッチンを借りて営業する方法も考えられます……と言いますか、金もコネもない場合は初期コスト的に言えばこの方法で始めざるを得ないのではないでしょうか。
 
 欠点としては、シェアキッチンが都市部に集中し地方にはほぼ存在しないことです。
 地方の場合は賃料も安いので大人しく通常の飲食店を開業しておくなりした方がいいのではないでしょうか。

3.仕込み場所が見つけられない作れない場合

 地方在住かつお金もコネもなく仕込み場所を見つけられないケースも中には出てくると思います。
 原則的にはキッチンカーを始める場合は仕込み場所が必要ですが、仕込み場所がいらないケースもあるので参考にして欲しいです。
 
(1)キッチンカー自体を仕込み場所とする
 最初に述べたとおり、キッチンカーの衛生要件をガッチガチに固めて更に要件が緩い保健所で申請をすればキッチンカー自体が仕込み場所として許可が貰える可能性もあると言えばあります。
 ただし、その場合はかなり大きなトラックが必要となりますしコストも馬鹿にならないと思います。
 その上そう言ったキッチンカーを作ってくれる業者も少ないので、DIYも必要になってくるかもしれません。
 
 こう言っては何ですが、金持ちの道楽としてやる以外はあまり現実的ではなさそうです。
 
(2)仕込みのいらない食材を使って調理する
 全部の食材を仕込みがいらないものに統一してキッチンカーだけで完結できれば、(やはり保健所にもよりますが)仕込み場所を登録せずに営業することも可能となります。
 例えば野菜を切る工程を省くためにカット野菜を使ったり、市販品のパンやソーセージを組み合わせてキッチンカーで焼くだけにすれば仕込み場所は必要なくなります。
 
 また、近年流行ったタピオカミルクティなんかは仕込み要件が少なく達成しやすい商品でもあります。
 
 ただし、食材の保管場所については営業所近くに業務用冷蔵庫があるだけでいいのか、それともやはり仕込み場所が必要なのか等、保健所によって見解が分かれるところでもあるので注意して欲しいです。

4.まとめ

 最近は東京でキッチンカーを見かけるケースが増えてきています。
 
 これは都の行政が方針を転換し、以前は利用に消極的だったビルの間の空きスペースを近年は積極的に開放していることが一つの理由として挙げられます。
 
 また、ゴーストレストランの台頭やレンタルシェフ等、従来の飲食店の方式に縛られない新たな開業方法が現れ、それに引っ張られる形で屋台の営業やキッチンカーも脚光を浴びるようになってきています。
 
 ことキッチンカーですが、厨房が仕込み場所と自動車の2つあるような形と言え、また、保健所によっても対応がまちまちなことも多いので注意が必要な許認可の部類です。
 分からないことも多いと思うので、開業をお考えの方はぜひ当事務所までご連絡ください。
 
 
 
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