2019年3月13日 / 最終更新日時 : 2020年6月11日 山県 慶宏 経営者向け 事業の立ち上げ(1)-個人事業主と会社の選び方- 事業立ち上げの際に、個人事業主で始めるか会社を立ち上げるか悩む方も多いと思われます。 同じ目線の仲間がいる、出資者がいると言うのであれば必然的に会社立ち上げとなるので分かりやすいですが、どちらも選べる場合はどうしようかとあれこれ考えることになるでしょう。 どちらにしようか悩んでいる場合は、個人事業主と会社を比べてみて、今の自分の立ち位置から選ぶことが最良と言えます。 今の立ち位置とは?個人事業主と会社はどう選べばいいのか? 今回のエントリーでは事業立ち上げの話をしていきたいと思います。 1.個人事業主と会社なら、やっぱり会社の方がいいの?2.「会社」の大きなメリット3.「会社」の小さくないデメリット4.まとめ 1.個人事業主と会社なら、やっぱり会社の方がいいの? 個人事業主と会社、それぞれにメリットデメリットがありますが、結論から言えば、個人事業主と会社を選ぶ際の基準は売上げで決めるといいのではないかと思います。 最初から結論と言う暴挙に出ましたが、個人事業主と会社であれば商売をするうえで圧倒的に会社の方が有利です。 一定の売上げがあり今後事業を拡大していく心積もりがあるならば、会社を立ち上げた方がいいでしょう。 個人事業主の方が役所への手続きや税申告が簡単そうなイメージもありますが、個人事業主であろうとも手続きや税申告はしっかりやらなければならないため、負担で言えばそれほど大きく変わりません。基準となる売上げ、つまるところ「税金がどの分岐点を境に会社の方が有利になるのか」という点がポイントになってきます。 一概に○○円売上げがあれば会社の方が有利!とは言えないですが、おおよそ事業主の所得が800万円を超える辺りから、会社の方が有利となってきます。 実際には事業状況を俯瞰したり税理士の先生に相談した方がいいとは思いますが、利益が安定して800万円を超える目算がつくようであれば、最初から会社を設立した方がいいと言えます。 2.「会社」の大きなメリット 利益が800万円超えないうちは個人事業主のままでいいのかと聞かれれば、必ずしもそうではありません。 会社を立ち上げる大きなメリットの一つに、「会社」と言う看板を持てると言うことがあります。 会社という看板は個人と比べてとても強いです。特に金融機関やリース会社との取引について言えば、会社の看板を掲げるだけで財布の紐が緩くなります。 個人が借りようとしてもなかなか貸してくれなかったものでも、会社の看板を掲げた瞬間に手のひらを反したように貸してくれることも多々あります。(特に工場ラインや重機類は会社名義でないとリースは難しいと思います) スタートアップに大きな資金がいる場合や高額のリース物件が必要な場合は、利益が800万円を超えない状況であっても、会社を立ち上げた方がいい……と言うよりも、会社を立ち上げなければならないでしょう。 3.「会社」の小さくないデメリット ここまで会社のメリットを並べると、「会社になった方が有利なんだし、最初にちょっと無理してでも会社で始めた方がいいんじゃないの?」と言う意見もでてくると思いますが、ここが難しいところで、当然会社立上げにもデメリットはありますし、個人事業主のメリットの方が大きくなる場合もあります。例えば次の点で言えば、個人事業主として始めた方がいいと言えるでしょう。 (1)会社から個人事業となるのはデメリットが多い。「会社からスタートしてやはり売り上げが思ったよりも芳しくないか個人事業主になる」と言うのは事実上難しいです。法的にも税務の上でも特に大きなメリットが無いうえに、煩雑な手続きのみが要求されます。 会社から個人事業主になるということは言わば格下げですから、周囲の評価(特に金融機関の評価)も大きく下がることになります。 「会社でなくなるなら今後の取引きはお断りします」と突きつけられる可能性も高くなるでしょう。 破産等によって強制的に個人事業主となる以外は、事実上不可逆と言っても過言ではありません。(2)逆に個人事業主から会社となる場合は手続きも税負担も有利! 対して、個人事業主が会社となる(便宜上「法人成り」とします)のは比較的容易です。 既に続けている事業が法人成りするとなれば周囲も祝福してくれるでしょうし、手続きも設立登記、税務署への申告及び関連役所への届出で済んでしまうことがほとんどです。 そして個人事業主から法人成りする際に税制上で大きなメリットがあります。 売り上げにもよりますが所得税と比べて法人税の方が税負担が軽くなるケースが多いですし、何よりも消費税の納税義務が実質2年間免除されます。 「最初は個人事業から始めて売上げが大きくなれば法人成りを」と言う方式が多い理由はここにあります。 (3)うまくいかなかった時のいわゆる「撤退戦」は、個人事業主の方が簡単で楽。 個人事業を畳むのは借金の多寡にもよりますが比較的容易です。対して会社を畳むのは会社清算したり名義を全て消したりと煩雑な手続きが多くなります。会社であれば比較的容易に融資を受けることができるため、借金の額も大きなものになるでしょう。小回りの利きやすさでは個人事業主の方が圧倒的に有利です。会社の立ち上げはある意味で「退路を断つ」と言う状況ともなります。 4.まとめ 事業規模が小さい場合は個人事業主の方が小回りが利き撤退戦もそれほど労力はかかりませんが、会社として事業を行う方が享受できるメリットが大きいです。 また、個人事業主は上方向への制約が大きいので、事業規模が大きくなる場合は必然的に会社からのスタートとなります。 どちらも選べる場合と言うことは、出資者もおらず大きな売り上げもない、と言う弱者のスタートとなるわけです。とは言え、現実的には会社立ち上げがスタート地点になる方よりも、「個人事業主から始めてゆくゆくは法人成りを」と言うパターンが大多数でしょう。かく言う私も弱者のスタートです。 事業スタートが会社立ち上げしか選択肢にないと言うことは非常に幸運であり、事業主の能力が非常に高いと言えます。 個人事業主から始めようか会社を立ち上げるか迷うこともあると思います。もしくは利益もあるので会社を立ち上げたいと言う方もいらっしゃると思います。「誰かに相談した方がいいかな?」そんな時は、当事務所にお気軽にご相談ください。 関連記事 事業の立ち上げ(2)-合同会社のススメ- 事業の立ち上げ(3)-無限責任の会社-