事業の立ち上げ(2)-合同会社のススメ-

 前回のエントリーで個人事業主と会社のについての話をしました。ではいざ会社を作ろうとなった場合、会社とは何か?と言う話になると思います。
 
 日本で会社と言えば、現在はほとんどの場合株式会社です。名のある大企業のほとんどは株式会社ですし、小さな町工場や個人がやっているような小さな商店でも会社化されているところは大体株式会社です。
(ちなみに、結構よく目に入る「有限会社」ですが、2005年の商法改正で作ることができなくなり、事実上株式会社の一形態として吸収されました。現在有限会社の看板を掲げているところは、少なくとも13年以上続いている会社と言うことになります。)
 
 株式会社は日本の会社組織形態を大体網羅していますので、宗教法人や医療法人、学校法人など職業区分上設立が必須となる法人でない限りは、基本的に株式会社をおすすめしています。
 
 しかしながら会社法上、「何が何でも株式会社を作るべし」と決められているわけではありません。
 株式会社の他にも何パターンか会社や法人の形態が用意されています。
 その中でも、営利法人であり個人事業主の形態に比較的近い、合同会社について、今回お話しようと思います。
 
 
・合同会社とは?
 
 合同会社は持分会社であり、(建前上)オーナーと社長が別である株式会社とは異なります。
 しかし中身を見ると株式会社と性質の近い組織形態です。小さめの組織形態にした株式会社を、更にコンパクトにまとめた会社と言う位置づけでしょうか。
 
 小さいと言うだけあって、株式会社と比べて設立時の税金が安く(株式会社の場合最低でも20~25万円はかかりますが、合同会社の場合は6万円~10万円で済みます)、手続きもある程度簡略に済ませられます。
 
 
・株式会社と合同会社の違い
 
 先程述べたように株式会社が建前上はオーナー(出資者)と社長(経営者)が別であるのに対し、合同会社は持ち分会社ですのでオーナーと社長が一致しています。株式を他の誰かに譲渡しても基本的に経営者が代わらないのに対して、出資を譲渡すれば経営権も譲渡されます。
 
 また、複数人で合同会社を経営する場合は、会社のルールである定款の変更には原則として全社員(ここで言う社員とは事務員や営業職と言ったような従業員のことではなく、出資者と言う意味になります)の意見が一致していなければなりません。
 定款の変更のみならず、社員を入れる場合や辞める場合も、同様に原則全社員の一致が必要となります。
 
 ルール上出資者や経営者にある程度流動性がある株式会社に対して、合同会社は期毎に経営者を代えたり増やしたり、出資者を新たに募ったりと言うことが難しくなっています。組織としての拡張性が低いと言うことは事業を拡大していこうとする上で看過できないデメリットとも言えます。
(もちろん合同会社から株式会社へ組織変更することは可能ですが、登記や税務署への届出等の手続きや商号変更による周知等が必要になります。)
 
 拡張性が低いと言うことは大きなデメリットですが、逆に言えば「敵対的買収」、つまり、会社の乗っ取りは株式会社と比べてやりにくい会社形態とも言えます。
 個人事業の延長で小さく誰にも邪魔されずに事業を営んでいきたいと言う場合は、メリットになる可能性もあります。
 
 また、営業利益の配分について言えば、原則株主平等の原則を謳っている株式会社と比べると、定款等でわりあい自由に配分することができます。
 
 
 感覚的な話にもなりますが、合同会社と言う名前の知名度が世間一般で見ると低いと言うデメリットもあります。
 お客様から「合同会社って何?変な会社なの??」と思われる可能性もあるということを念頭に置かなければなりません。
 
 
まとめると、株式会社と比べて下記のメリット、デメリットがあると言えます。
 
メリット
・株式会社と比べ設立のコストが安い
・利益配分について株式会社よりも自由に決められる
・敵対的買収が難しい
 
デメリット
・株式会社と比べ拡張性が低い
・合同会社と言う名称が一般に浸透していない
・人に属するため、原則抜ける場合に社員全員の同意を得なければならない。また、人が抜ける際に資本の額が減少する。
 
 
 余談になりますが、アマゾンやウォルマートなど、外国資本の大会社における日本法人の中には合同会社の形式をとる会社もあります。
 法人税の関係になるお話ですが、長くなってしまいますので今回は割愛いたします。ただ、アマゾンなどが合同会社を名乗ることによって、合同会社の知名度も上がっていけばいいなとは思います。
 
 
 
・まとめ
 
 2005年に新設された合同会社ですが、当時4000件前後だった会社の数は現在5万5000件と、大きく実数を伸ばしています。
 会社を大きく育てて売上げを伸ばし、いずれはIPOをして株式上場を、と言う大きな夢を描くのには向きませんが、足元をしっかり固めて地に足をつけた会社経営をしたいという場合は、合同会社の方が向いているとも言えます。
 
 このエントリーが会社設立の際の一考になれれば幸いです。