大体の場合は「委託者」が「受益者」を兼ねることになりますが、基本的には「委託者」と「受益者」は別の存在ですので、「受益者」をC子お母さん等にしても全く問題はありません。
「なんで契約を先に結ぶみたいな面倒くさいことをするの?別にA太郎お父さんが管理してB次郎息子が手伝えばいいじゃん」と思うかもしれませんが、なかなかそうもいかないのが法律の世界。
A太郎お父さんがボケてしまったときは、財産の保存行為ができなかったり事実上凍結してしまったりします。
現実の運用上はあまり起こりえませんが、今回のケースで言えば最悪ビルの貸し借りができないまま放置……なんてケースもあり得るかもしれません。
ボケてしまっても成年後見を開始して保存行為くらいは認められたりしますが、少なくとも「ビルを売ってそのお金を介護費用に充てよう」なんてことはまず不可能になります。
その為にお父さんがまだ元気なうちに息子に財産の管理を信託する契約を結んで、自分がボケた後も事務処理を息子の名前でやってくれるような仕組みを作ることが家族信託なわけです。