お役所ワーク-お役所仕事と言われるワケ-

 お役所仕事と言う言葉から連想されるイメージは、決していいものではないと思います。
「紋切り型」「融通が利かない」「役所本位で客目線に立っていない」などなど。

 

 昔から役所の仕事というのは、頑固で融通が利かないとよく言われておりました。21世紀も月日を重ね世情は変われど、お役所の本質は今もそれほどかわっていません。この記事をご覧の皆様の中にも、免許証や判子を持ち合わせていなかったがために、窓口で門前払いをくらってしまった方もいるのではないでしょうか。それでも、窓口に関して言えば昔と比べて随分と丸くなったようですが。

 

 しかし、我々の業界からしてみれば、お役所仕事の方が実務上ありがたいわけです。なにせ役所の言うものさえ揃えてしまえば、文句を言わせず申請を受領させることができるわけですし、「この書類なら受け付けてくれる」と言う前例が蓄積していくからです。

 

 反対に、役所が変に柔軟な対応を見せると困ったことにもなります。たまたま最初の担当者が融通を利かせてくれて、それを伝えられず次に同じ申請を出したときに、「前回はそれで受け付けましたけど、本当はだめなんですよ。今回は受け付けられません」なんて言われてしまった日にはもう目も当てられませんまたお客さんに説明をして書類を集めたりしなければならないなんてことや、下手したら、お客さんが望む日付に許可がおりない、なんて事もありうるでしょう。
 
 
 ところで、何故に役所の仕事が紋切り型で融通が利かないかというと、彼等の仕事や規範というものは、原則的に法令で定められているからです。
 申請に対する必要事項が法定されている以上、現場の人間の独断で決定することはできないわけです。
(分かりやすいところで言えば、戸籍法第十条の三に、「戸籍謄本取得の申請を出された役所は、運転免許証を提示する方法等で本人確認しなさい」とはっきり書かれています。法律の条文に「運転免許証」と具体的なものが例示されていることは非常に珍しく、とても面白いです)
 
 もちろん上級官庁が通達でああしろこうしろと言うこともあるでしょうし、現場にも一定の裁量権はあります。しかし法令というものは我が国において最強の権力を持っていますので、法定されているものを覆すことはほぼ不可能でしょう。
 
 
 
 役所の窓口の前で長時間「俺は今日しか役所に来られないんだ!いいから書類を出せ!」と怒鳴っている方や、「今、印鑑登録証明書が貰えないと融資がおりないんです……後生ですから出してください……」と泣きついている方を、実際にみたことがあります。
 
 しかし、法定の必要書類がなければ申請を受け付けてくれることはありません。窓口の方やその上司、いや、市長でさえも、要件を欠いた申請を受け付ける権限は持っていないのです。(正確には、受け付けることはできますが、要件不備で即時に却下されるのであまり変わらないでしょう。)
 
 我々実務家は窓口でごねても通らない事はよく知っているので、必要な要件を欠いているので申請が受理できないと言われたときは、「そうですか、出直します。」と表情はクールに、内心では大泣きしながら役所を後にするわけです。