年配の方や資産の多い方については、我々士業は間違いなく公正証書遺言をお勧めしています。
遺言書を作成して公証人に認証してもらう方法ですが、お金はかかるかわりに遺言としての強度が他の方法と比べて圧倒的に強いからです。
しかし若い方やそれ程資産を持っていない方、もしくは現役で仕事をしており資産が流動的である場合については、必要ないとは言わないまでも公正証書遺言にお金をかけるよりも自筆証書遺言で済ませた方がいい場合もあります。
と言う訳で、自筆証書遺言の要件についてお話していきましょう。
自筆証書遺言は曲がりなりにも「証書」であり、法定の要件を満たさなければ「法律上無効」となります。(もちろん要件を満たさずに無効となっても、後日遺産分割協議等で遺言と同じ財産分けをして全く差し支えはありません。)
その要件とは次のとおりとなります。
(1)財産目録以外の全文を自書
(2)作成日付の自書
(3)氏名の自書及び押印
(4)15歳以上であり、かつ意思能力がある
ここを抑えていれば基本的に遺言として認められるでしょう。
例えば今を時めく女子高生がデコレートされた便箋に
「あたしの今ある全財産☆ えりかパイセンにちょ→お世話になったから、あたしが死んぢゃったら全部あげちゃう☆」
と言ったような本文で遺言書のようなものを書いたとしても、日付と氏名が自書され押印してあれば理論上は自筆証書遺言として成立していることになります。(ただし、家庭裁判所の検認が通るかどうかは未知数である上に、相続人……この場合は父母になるケースが多いと思いますが……としてはたまったものではないので、家裁に遺言の無効等を申し立てるなりすることになるだろうとは思います)
上記のとおり要件さえ抑えてしまえば原則遺言は有効でありますし、あまり無効を恐れることはないと思います。
逆にこれは士業としてのアドバイスですが正直遺言を書く上で最も重要なことは、法律的なことをしっかり守るよりも、相続人となり得る人達に対して「自分はこういう遺言を用意しており、不慮の事故で亡くなったとしたら遺言のとおりに財産を分けて欲しい」と伝えておくことではないかと思っています。
争いの回避には形式的なことよりもコミュニケーションの方が大事です。