ボードゲームカフェ開業の手引き(2)ー開業にまつわる許認可の話ー

 
 ボードゲームカフェを開業するならば避けて通れない許認可があります。
 その一つが食べ物や飲み物を提供するための「飲食店営業許可」
 
 店内で飲食物を提供するのならばどの名目でも保健所に対して飲食店営業許可を申請しなければならないのですが、逆に言えば店を「イベントスペース」限定にして飲食物を出さないのであれば、行政の許可はほぼ必要なくなります
 ただし、飲食物での収益を捨ててスペース代だけで収益を稼ぐと言うのはなかなか難しく、経営が安定しない可能性も高いです。
 
 今回は許可の必要不必要を踏まえた上で、ボードゲームカフェを開業するための許認可についてお話ししていきますが、正直手続き的な話であり普通の方にとっては面白くもなんともない気がしますので、まずは行政書士に相談してみた方が手っ取り早いのではとも思います。

1.飲食店営業許可

 カフェである以上、開業するにあたってほぼ確定で取らなければいけないのは飲食店営業許可」「喫茶店営業許可」となります。
 
 「カフェなんだし喫茶店営業許可でいいんじゃないの?」と思うかもしれませんし、飲食店営業許可よりも喫茶店営業許可の方が要件も軽く費用も安いのですが、実際のところは喫茶店営業許可はできることが圧倒的に少ないため「ほぼ使われていない」と言うのが正直なところです。
 
 どれくらい「できることが圧倒的に少ない」かと言うと一般的に喫茶店営業許可でできる調理方法は「トーストを焼く」くらいです。あとはまあ、個包装されたお菓子やパンを出したりするとか。
 そうなると飲食物で収益を上げるのは難しくなりますし、酒類も提供することができません。
 
 制限がきつすぎて「飲食店営業を諦めてイベントスペースにするのと変わらないじゃん!」程度のことしかできない上に設備要件がそれに見合った緩和がされているかと言うとそうでもない(何だかんだ清潔な洗浄設備とか冷蔵設備が要求されます)ので、喫茶店営業許可とは言いつつも、世の喫茶店のほとんどは飲食店営業許可の元で開業していると言うのは現状です。
 
 と言うことで、基本的には飲食店営業許可を取得することになりますが、避けては通れない道として飲食店営業許可の取得は保健所の基準に合う厨房設備及び客席が必要であるため、居抜き物件でなければ改装費用がかなりかかります。
 
 また、あわせて食品衛生責任者及び防火管理者の資格が必要です。
 食品衛生責任者及び防火管理者についてはどちらもそれ程手間なく資格が取れるため、オーナーもしくは店長が取得することになると思います。

2.深夜酒類提供飲食店営業届

 この項目は「酒を出さない」、もしくは「午前0時前に店を閉めて午前6時より後に店を開ける」場合は該当しないので読み飛ばしてしまっても構いません。
 逆に言えば、「酒類を提供」し、かつ「午前0時から午前6時までの間に営業」する場合は、深夜酒類提供飲食店営業届が必要となります。
 
 深夜酒類提供飲食店営業届ですが、管轄は警察署であり書類も煩雑なものとなっています。
 そして店舗設備の制限もなかなか厳しいので、制限がクリアできない場合は深夜営業もしくは酒類の提供のどちらかを諦めることになるでしょう。
 
 また、立地によってはそもそも深夜酒類提供飲食店営業ができない可能性もあるので、注意したいところです。
 
 
 ちなみに飲食店営業許可に酒類提供行為自体が含まれているため、ただ酒を出すだけでしたら飲食店営業許可だけあれば充分ですので、例えば「居酒屋営業許可(架空の許認可)」と言ったような他の許可は必要ありません。
 
 常識として注意しなければいけないのは、「缶チューハイや瓶ビールを開封せずに客に提供すること」は「酒類の販売」に当たり、税務署の許可が必要となります。
 わざわざ酒類販売者として税務署に許可を出すのも非常に手間なので、缶チューハイや瓶ビールを提供する場合は栓を開けてからにしましょう。
 
 
深夜酒類提供飲食店になるとどんな制限を受けることになる?
例1)小学校から半径100m以内に店を構えられない」等の、店舗の立地に対する規制がかかるようになる。
 
例2)店舗内の個室の床面積等に規制がかかるようになる。

3.風営法営業許可

 基本的にボードゲームカフェの営業については風営法の該当店舗には当たりません。なので風営法関係もそれほど考えなくていいと思います。
 ただし、サービスによっては風営法該当店舗に当たってしまう可能性もあるので注意が必要です。
 
 
 具体的にひっかかりやすい例を次に挙げておきます。
 
 
(1)ゲームの最低人数が足りなくて困っているテーブルに対して、従業員を補充メンバーとして充当した。
 異性同性による違いは出てきますが、基本的に「従業員をテーブルの補充メンバーとして遊ばせるような接客」をさせる場合は風営法の該当店舗となります。
 特にメイドボードカフェ等として従業員がメイドに扮して一緒にゲームをすることが売りとなるようであれば、まさに風営法該当店舗です。
 
 風営法該当店舗となると途端に制限が厳しくなるので、従業員によるメンバー補充はやめておくか、種々の制限を乗り越えて風営法該当店舗となるかのどちらか選ぶことになります。
 
 当たり前ですが従業員に限らず店長やオーナーも対象になります。
 ゲーム好きが高じて店長が飛び入りでゲームに参加してしまうのはある程度なら仕方がないで済ますこともできますが、反復性があると風営法該当店舗と判断されてしまう可能性があるので注意しましょう。
 
 
(2)店舗主催のイベントでボードゲーム大会を定期的に実施し、景品をつけることとした。
 もともと高額の景品に対する風当たりは厳しい日本の法律ですが、店舗主催イベントで景品をつける場合は風営法の許可を取った方が無難と言えます。
 中には風営法許可を取らずに景品が出るようなゲーム大会をしている店舗もありますが、黒寄りのグレーゾーンですのでこちらからは何とも言えませんし、この場では「やめておいた方がいいです」としか言えません。
 
 逆に風営法上の許可を取れば(高額商品でなければ)景品をつける事は可能ではありますので、(1)と同様、制限を乗り越えて風営法該当店舗となる選択肢はあります。
 
 ただし技術的な問題が一つありまして、ボードゲームカフェ自体に対する風営法許可の前例がほぼ無いため、申請しても許可取得に時間がかかるか門前払いをされてしまう可能性はありえます。
 この辺りは警察署の匙加減次第です本当に。
 
 
風営法該当店舗になるとどんな制限を受けることになる?
例1)午前0時から午前6時の間営業ができなくなる。
 
例2)「小学校から半径100m以内に店を構えられない」等の、店舗の立地に対する規制がかかるようになる。
 
例3)店舗内の個室の床面積等に規制がかかるようになる。

4.まとめ

 安定した経営を目指すのであれば、イベントスペースとして開業するだけでなく、飲食店営業許可も取得してスペース代と食事代の二本柱で営業する必要があると思います。
 酒類は提供する方が収益はよくなりますが、酒が入ることによるトラブルも考えるとそこはオーナーの判断次第です。
 酒類を提供する場合、営業時間が午前0時を越える場合は警察に対して深夜酒類提供飲食店の届出が必要となりますので注意してください。
 
 風営法については基本的に許可取得の必要はありません。
 ただし、従業員がお客さんと一緒になってゲームをする場合や、ゲーム大会を主催して景品等を出す場合は風営法の規定に引っかかる可能性があります。
 
 深夜酒類提供飲食店届出にしろ風営法許可にしろ、手続きの手間と店舗の制限があるので簡単に取得と言う訳にはいきません。
 許可を取らないで営業する方を選択した場合は、風営法に引っかからないような店舗運営をして欲しいと思います。
 
 「なんとなく不安だなー」と言うこともあるようでしたら、まずはご相談から、当事務所までお気軽にお電話ください。
 
 
 
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