ここまで会社のメリットを並べると、「会社になった方が有利なんだし、最初にちょっと無理してでも会社で始めた方がいいんじゃないの?」と言う意見もでてくると思いますが、ここが難しいところで、当然会社立上げにもデメリットはありますし、個人事業主のメリットの方が大きくなる場合もあります。例えば次の点で言えば、個人事業主として始めた方がいいと言えるでしょう。
(1)会社から個人事業となるのはデメリットが多い。
「会社からスタートしてやはり売り上げが思ったよりも芳しくないか個人事業主になる」と言うのは事実上難しいです。法的にも税務の上でも特に大きなメリットが無いうえに、煩雑な手続きのみが要求されます。
会社から個人事業主になるということは言わば格下げですから、周囲の評価(特に金融機関の評価)も大きく下がることになります。
「会社でなくなるなら今後の取引きはお断りします」と突きつけられる可能性も高くなるでしょう。
破産等によって強制的に個人事業主となる以外は、事実上不可逆と言っても過言ではありません。
(2)逆に個人事業主から会社となる場合は手続きも税負担も有利!
対して、個人事業主が会社となる(便宜上「法人成り」とします)のは比較的容易です。
既に続けている事業が法人成りするとなれば周囲も祝福してくれるでしょうし、手続きも設立登記、税務署への申告及び関連役所への届出で済んでしまうことがほとんどです。
そして個人事業主から法人成りする際に税制上で大きなメリットがあります。
売り上げにもよりますが所得税と比べて法人税の方が税負担が軽くなるケースが多いですし、何よりも消費税の納税義務が実質2年間免除されます。
「最初は個人事業から始めて売上げが大きくなれば法人成りを」と言う方式が多い理由はここにあります。
(3)うまくいかなかった時のいわゆる「撤退戦」は、個人事業主の方が簡単で楽。
個人事業を畳むのは借金の多寡にもよりますが比較的容易です。対して会社を畳むのは会社清算したり名義を全て消したりと煩雑な手続きが多くなります。会社であれば比較的容易に融資を受けることができるため、借金の額も大きなものになるでしょう。小回りの利きやすさでは個人事業主の方が圧倒的に有利です。会社の立ち上げはある意味で「退路を断つ」と言う状況ともなります。