休眠抵当権の話

 相続の業務をしているとたまに当たるのが休眠抵当権。
 
 行政書士としては登記関係は触れられる部分ではないので、休眠抵当権については基本的には司法書士の先生に丸投げお任せすればいいのですが、解決方法があると言う事は抑えておきたいところですので備忘録的にエントリーとして残しておきます。
 
 
まず現実的でない解決方法2つからいきたいと思います。
 
 
方法1:正攻法である権利者と義務者の共同申請
 
 権利者と義務者による共同申請と言う一番オーソドックスな形の抹消方法ですね。
 しかし残念ながら、休眠抵当権においてはまったく現実的ではありません。
 
 休眠抵当権は登記の日から何十年と経っているから休眠しているのであって、登記義務者特定できてなおかつ必要書類を所持しているなんてケースは稀も稀、1%の確率にも満たないです。
 更に義務者が個人であれば何代も相続を重ねていますので、相続人全員から書類と判を貰うのはまず無理です。
 
 
 方法2:当時の弁済を証明して抹消登記を申請
 
 続いて権利者が当時の弁済を証明して抹消登記を申請するケース。
 当時の借用書や弁済を証明する領収書などを付けて、権利者単独で抹消登記を申請する方法ですが、これもなかなか無理な話です。
 
 そもそも何十年前の書類が残っているかと言われるとまず無理でしょう。
 残せるほど几帳面な方なら、銀行なり信金なりから抵当権の解除書類を受け取った時点で抹消登記をしているはずです。
 
 金融機関についても何度も統廃合を繰り返してますし何十年も前の記録は保存期間が過ぎています。義務者である銀行を探し当てても書類が出てくる可能性は低いでしょう。
 
 
 以上、通常は正攻法ながら休眠抵当権においては現実的でない解決方法2点でした。
 ただし、下2つの解決方法は現実的ながらお金と時間がかかる解決方法であり、上2つの方法で解決するならそれはそれで手っ取り早いです。書類が残ってたりするなら儲けもの、上2つの方法で解決してください。
 
 
 
さてさて続いて、実務的にはこれが現実的かなと思える解決方法2つです。
 
 
 方法3:法務局に「供託」して抵当権抹消登記を申請
 
 元本、利息及び遅延損害金を法務局に供託して、供託証でもって権利者単独で抹消登記を申請する方法です。
 
 必要書類も少ないですしやりやすいと言えばやりやすいですが、抵当権の設定金額によっては現実的でない額が待っています。例えば100万円の抵当権で利息5%、遅延損害金が18%の場合、戦後すぐの1950年前後に借りていたとして、現在の額は約1300万円から1500万円となります。その額まるまるを供託しなければなりませんからなかなかの覚悟が必要です。
 
 逆に「大正時代の設定額100円の抵当権が残ってる」なんて場合は供託額も2000円いかない程度ですので、この方法がいいのではないかと思います。
 
 
 
 方法4:裁判所の公示催告及び除権判決
 
 裁判所に申立てをして抵当権者に対して公示催告し、一定期間経過後に執行文付きの除権判決を受け、判決を元に単独で抹消登記申請をする方法です。
 
 義務者が個人の場合や大手金融機関でない会社の場合は有効な方法です。名の知れた金融機関の場合、裁判所から「相手が分かっているんだからまずは金融機関に連絡をしろ」と突っぱねられる可能性もあります。 
 
 この方法は必要経費自体はそれほどかかりませんが、除権判決を待たなければいけないので結構時間を取られます。また、裁判所の申立ては素人には難しい面もありますので司法書士に書類を作成してもらうか弁護士を立てた方がいいでしょう。そうなると報酬が結構かかったりします。
 
 
 
 
・まとめ
 
 休眠抵当権が残っていると不動産の売買を阻害したり抵当権が設定できず金融機関から融資を受けられなくなる可能性があります。
 
 基本的には不動産屋は売買を仲介したいし銀行は金を貸したいのでできるだけ解決の方向で手助けをしてくれると思いますが、なかなか面倒な問題でもありますのでお客さんに丸投げ…なんてケースも珍しくないと思います。
 
 そんな時に解決方法を知っていれば他士業の先生に案件を紹介するときにもスムーズに回せますので、休眠抵当権の解決方法を知っていてもいいのではないかなと思います。