行政書士の隣のTCG市場について

 少年ジャンプで連載していた遊戯王と言う漫画及びゲームはご存じでしょうか。今から20年程前に一世を風靡し社会現象にまでなった作品ですので、名前くらいは聞いた事があるのではないかと思います。日本においては遊戯王のブームがきっかけとなって数多くのトレーディングカードゲーム(以下、TCGとします)が生まれ、残念ながら現在は半数以上が潰れてしまいましたが、カードの売買を取り扱う数多のTCGショップが開店しました。
 TCGショップは商売の性質上古物商許可が絶対的に必要な業種ですので、我々行政書士にとっても無関係な市場ではありません今回はそんなTCG市場が現在どのような動きをしているか、間口となるエントリーです。
 
 さて、「そんなブームもあったね」とか「昔はやってたよ。懐かしいなあ」とか言われがちなTCGですが、一般のメディアのニュースには乗らなくなっただけで現在も生き続けていますし、新しいカードも増え続けています。
 TCGショップに関する日本の市場を見てみると、全盛期であった2000年代前半でおよそ600億円前後で推移していました。なかなかの市場規模だったようです。あの時から15年、ブームも去って久しい今の市場規模を見てみると……900億円超。あ、あれ?増えてる…?
 
 
 TCGを扱うショップの数は全盛期と比べて確かに減っています。採算が合わなくなって撤退した企業や廃業した個人業者は数多くいます。それでも市場規模が成長しているのは何故なのか?
 
 
① 企業努力が実り、安定した経営ができている
 
 遊戯王TCGの版権を持つコナミや大手TCGメーカーである株式会社ブシロード、他にも外資であるWotCが堅調な伸びを示し、業界全体が活気に満ちています。2017年は一時期不調に陥りましたが、2018年及び2019年は各社とも売れ筋商品をリリースしており、顧客の囲い込みに成功しています。
 
 
② リバイバルブームがあり、当時プレーしていた層が戻ってきている
 
 15年前にメインターゲットだった顧客が現在TCGメーカーの主力層となり企画を通しやすくなったため、当時TCGで遊んでいた層の復帰を促す結果となりました。現在は20代後半から40代前半の趣味にお金を投資できる年代でもありますので、その分市場が大きくなったと予想できます。
 
 
③ 1枚のカードの価値が跳ね上がった
 
 特に現在は絶版となっている一部の昔のカードの価値が、大きく跳ね上がっています。
 
 
 参考資料としてこの3枚
 なんだかデザインも古く見栄えも良くないカードですが、市場価格で言うと1枚6万円です。3枚あわせて18万円。現在はほぼ引退済みのいちプレイヤーに過ぎなかった私が持っている物ですらこの価格ですから、往年のコレクターについて言えばその資産総額は計り知れません。中にはカード1枚に1800万円をつぎ込む好事家もいます。特に海外展開しているTCGは市場規模の大きいアメリカや欧州も相手にしているわけですから、絶版カードの価値は年々上がり続けています。
 
 
 しかしながら市場規模自体は拡大を続けているTCG業界ですが、新作の販売や中古品を扱っている小売り業者について言えば必ずしも楽観できるものではありません。
 まず、何度も述べているようにショップの数自体は減少傾向にあります。ショップ数の縮小は顧客数の縮小にも繋がりますので、業界全体でショップ数減少について考えていかなければならない状態と言えます。
 また、他の部門と比べて扱う物に対する深い商品知識が必要でありかつその数が膨大である点、偽造品も多く出回る業界であり偽造を見抜ける鑑識能力や知識が必要な点等、経営者本人の学習コストや従業員に対する教育コストが大きく、思いのほか採算が取れないケースも多くあるようです。
 加えて一部の絶版カードについて言えば骨董品や美術品に近い物であり、商品劣化の対策も必要になってきます。
 
 
 以上のようにTCG業界は市場規模が拡大しつつもショップ数は減少している謎の業界となっていますが、ここ数年は大手小売店(例えばTUTAYAやGEOと言った中古品チェーン店)が片手間にやっていたTCG販売部門が撤退した分、個人業者の新規参入が増え始めていると言う統計も出ています。商品容量が小さく置き場にはそれ程困らないものですから、実店舗を持たずともインターネットモール上に手軽に店舗を構えられます。副業も視野に入れるとその辺りも人気のようです。
 ひょっとしたらこの記事を読んでくださった同業者の先生の元にも、TCGショップに関する古物商許可の依頼が舞い込んでくるかもしれません。その折には上記のような業界の状況を踏まえつつ適切なアドバイスを送りながら、主に扱う業務は「道具類」での取得をお願いいたします。